「宇宙よりも遠い場所(TVアニメ動画)」

総合得点
93.9
感想・評価
2819
棚に入れた
9835
ランキング
12
★★★★★ 4.2 (2819)
物語
4.3
作画
4.1
声優
4.2
音楽
4.1
キャラ
4.2

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ネタバレ

ガムンダ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

無理があるが良い試みと思った ※追補

女子高生が南極を目指すお話

部活ものも流石に飽和状態となった所で一般的でない活動にネタをシフトしてきました。
目標が少しヘヴィになりますので、その分女子高生たちの動機づけもヘヴィである必要があります。
それらが相まって並の部活ものよりは見応えも増量と言った所でしょう。
それ以外は普通の部活もの、友情ものの体裁を採っています。
(私は少し「TARITARI」を思い出しました。)

先に全体評を述べると、ラストに近付くほど見応えがあり、中々良いです。
南極に到達した時点で感動のゴール、ではなく、そこから数話を割いて物語を盛り上げています。
逆に言うと南極に到達するまでが安直でトントン拍子過ぎる気がします。

この辺は企画の中で尺とのせめぎあいが有ったんでしょうね。
でも最後まで観れば後半の丁寧さが解り、なるほど納得できる構成と思いました。
13回という制約の中では本当に巧く纏めてありますが、そも13回の制約自体が惜しい作品でした。
あと4、5回もあれば訓練シーンにスポ根要素を盛れましたし、隊員として鍛え上げられ結束する下地も描けたし、専門的な薀蓄ももっと盛れて見応えが増したでしょう。
前半の苦労話にバランス良く振り向けられて、もっと大作に出来たのに惜しいです。

どうもこの○年○季と言うアニメ量産体制の業界の制約がそのアニメに相応しい尺と言う観点では足かせになってますよね。
「クール」で区切った方が業界のリソースのやり繰りに都合が良いんでしょう。
さりとてこの企画では2クール分の予算は通らなかったと想像します。
実に惜しい作品でした。
1クールでも長過ぎるアニメもあるというに。
(ついでに言うとウケると分かってから無理矢理続編作るのは下の下策です。)


それから命の危険についてももっと扱うべきです。
これも前から思ってましたが、日本のアニメって滅多矢鱈と戦争するか醜い物が何もないほのぼのかの両極端ですよね。

{netabare} ある失敗で足手まといの仲間を置いていく行かないのくだりでの結論は「意地でも4人で行く」になりましたが、本来なら「4人で生きるか4人で死ぬか、鉄の結束が無ければ1人生き残る事もままならない」と言う明確で合理的な思考法としても良かったと思います。 {/netabare}

なんなら
{netabare} シラセの母の遺体を回収する {/netabare}
くらいの生生しさあっても良かったと思いますが。

して、やはりそもそもネタに無理があります。
{netabare}民間宇宙開発が盛んになってきていますが、それはそこにビジネスチャンスがあるからです。
民間南極観測には何の意味がありますか?
作中でその答えは「行きたいから行く」の強行突破でした。
そりゃそれではスポンサーは付きません。
1人追加でもかなり厳しいはずなのに、ポっと4人追加は流石に無理あります。
もっと巧い逃げ方はあったはずです。
例えば日本は(お堅いから)無理だとしても、外国の観測隊に1人数億円も払えば同行は可能でしょう。
それでも自前で行くよりはずっと安いです。
(※決まった地点へ行くだけなら数百万円のツアーがあるそうです。)

そもそも南極じゃなくて深海探索にしたら?(と前半は思いました。)
それなら「女子高生サイズじゃないと新型探査船に搭乗出来ないから公募する」とか逃げ道があります。
そもそも「宇宙よりも遠い場所」とはしばしば深海を指して言う表現です。
それは過去に到達した人数が宇宙よりも少ない事に由来しています。
ある意味で宇宙よりも行く事が困難な場所だからです。
例えば宇宙船の内外圧差は大気圧分に過ぎませんが、深海探査船の耐圧性能はその数百倍必要です。
それに比べ、南極は流石に宇宙よりは近いです。{/netabare}

しかし先ほども書きましたが最後まで観たら納得です。
この話は南極である事を生かしています。
「戦車道」に疑問を挟まないのと同様に「南極」を受け入れさえすればとても素晴らしいストーリーでした。

神回12話、白眉のエピローグ13話
クライマックスのシーンは何の説明も要さず誰もが泣けました。
このシーンは今までアニメを観てきた中でも本当に素晴らしいシーンだったと思います。
{netabare}
シラセが3年間で書いた1000通を超えるメール
(随分大らかなサーバーだなってのは置いといて)
おそらくその3年間、母を想い、バイトに明け暮れて居たのでしょう。
決意や弱音や母への甘えや、様々な事が書かれて居たに違いありません。
母へ書いたはずのメールを母が読むはずだった場所でシラセ自身が目にします。
それはシラセに母が既にこの世に居ない現実を突きつけると共に、彼女自身がここへ来たことでそれを受け容れられる程強くなった事、もはや独りではない事、そして前に進むであろう事、、、来たばかりの時はイマイチ実感を伴わなかったこの経験の意味をこの時初めて噛みしめます。
その全てがこのシーンに凝縮されていましたね。 {/netabare}
このシーンは本当に凄かったですね。

そして13話
シラセが母に返した言葉、この言葉でシラセが母の様に強く大きくなった事を決定づけます。
私的には同じくらいめぐっちゃんもなかなかだなって感動しました。
{netabare} キマリと対等の親友であり続ける為に出来る行動は何か。
その答えを見つけるは易し、実行に移した彼女もなかなかの器だと感動しました。{/netabare}
綺麗過ぎる程巧かったですね。


若者が成長する話は鉄板ですね。
この調子でどんどんこういうの作って欲しいです。
見応えある方がやっぱり軽~いのよりウケるでしょ。

余談ですが
バナナのネタとか、おっさんにしか分らんのチョイチョイ挟みますよね、日本のアニメって。
私おっさんですが、おっさん視聴を意識しないで作って欲しいんです。
この複雑な気持ち、分かりますか。



評価修正 物語、作画、声優、キャラ4→4.5
(総合3.8はいかにも低く感じ滅多に使わない.5を使う事でこの作品に敬意を表したいと思います。)
文修正、追補。
アゲてすみませぬ。

投稿 : 2018/05/06
閲覧 : 405
サンキュー:

35

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