雀犬 さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
クマーーーー!
2015年冬アニメ。幾原監督によるオリジナルアニメーション。
制作はSILVER LINK.
嵐が丘学園に百合城銀子と百合ヶ咲るるという少女に扮した
2匹の人食いグマが転校生として侵入し、
クラスで孤立している椿輝紅羽に接近する。
―――狩るか食われるか
人とクマの戦い、そして怒涛の百合展開が始まる!!
・・・というお話。⊂( ・∀・)ワケ ( ・∀・)つワカ ⊂( ・∀・)つラン♪
難解と評判のアニメですが僕はこう解釈しています。
{netabare}
2008年前後にKYという言葉が流行しました。
ご存知かと思いますが、KYとは「空気(K)が読めない(Y)」の略です。
平和で楽しい空間を守るためにその輪からはみ出そうとするもの、
平和を乱そうとするものをKYというレッテルを貼り排除しようとする。
皆が穏やかな空気、いわば「凪」の状態を維持しようと躍起になる。
誰かが「波風を立てる」ことを許さない。
こうして表面上は落ち着いた「凪」に見えてもその裏では
目に見えない風が吹きつける居心地の悪い集団が形成される。
その一般的に同調圧力と呼ばれる力を「透明な嵐」と表現しています。
2017年の流行語が「忖度」「インスタ映え」であった通り、
10年たっても日本人のコミュニティー志向は変わっていません。
「仲間」「周囲」「共同体」の承認を得るために、
気分を察知し、空気を読むことがますます重要視されるようになっています。
(このアニメは「承認」という言葉もキーワードになっていました。)
このような社会になった背景には
地域・家族・会社という旧式の共同体が空洞化し、
縦のつながりが弱くなった分、人は横のつながりを大切にしようとする
ようになったからだと言われています。
「ユリ熊嵐」はそんな世の中で息苦しさを感じず生きるには?
というテーマを掲げています。
作品は複雑怪奇ですが、幾原監督の持っている答えはシンプルだと思う。
「一対一のつながりを大切にしよう」
そうすれば「一対多のつながり」で苦しまなくても良くなるんだよ、と。
本作が第一話から最後までずっとスキスキスキスキ言ってるのは
「好き」という感情は「一対一」の関係で生まれるものだからです。
本作が女の子同士の絡み、百合を描いているのは
男女の「好き」だとどうしても性欲、動物としての本能が前面化されてしまう。
百合なら好きという感情は精神的なつながりだけ成立するし、
アニメとして美しくビジュアル化できるという利点があります。
それだけの理由で本作は百合を描いているんだと思います。
透明な嵐に負けない、個のつながりを作っていこう。
それが「ユリ熊嵐」が視聴者に訴えかけたいことではないでしょうか。
{/netabare}
なるほど、このアニメの持つメッセージ性は素晴らしい。
が!!肝心のお話が「ユリ熊嵐」はあんまり面白いと思えなかったのです。
途中で何回か寝落ちしかけたw
同監督の「輪るピングドラム」も抽象的で難解な作品ですが、
こちらは運命日記というマクガフィンを使ってキャラを動かし
日記、そして人の命を賭けた争奪戦という物語を作り上げていました。
ピンドラにはエンタメとしての完成された面白さがあった。
でも「ユリ熊嵐」は物語がどこに向かうのか曖昧で、
最後までフワッとしている。
僕はあまり引き込まれるものがなかったですね・・・
ちょっとお勧めしづらいアニメになってしまいました。
幾原監督の次の新作は「さらざんまい」という謎すぎるタイトル。
次も社会派アニメなのでしょうか。
オンリーワンの作品を作られる方なので楽しみにしております。