Progress さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
失ってばかりでは「この世界の片隅に」とはでてこない
簡単に感想で。
スズと日常
幼少時代、スズの家族は
父母に加え、兄、妹や、祖母に囲まれていました。
祖母はスズの優しさに気付いたり。嫁ぐ前に色々を教えてくれたりと、
家族的暖かさを感じました。
そして北條の家に嫁いだ後は、優しい夫、優しい義父母、気難しい義姉とその子供と暮らしていきます。
一人よそ者感のような物を感じつつも、色々な事を覚えて、色々な節約術を使い戦時中の困窮を乗りこえていこうとするその姿に、陰鬱な雰囲気が無く、見やすかったです。
その中でも、戦争の後半、もしくは戦後で、片腕と義姉の子を失いつつも、たくましく生きていこうとするスズと家族の家族愛のようなものがとても輝いてましたね。
スズと恋人
幼少時代にスズに対して水原が好意を抱き、
スズも水原の事を好きで、でも伝えられない思いというのが、
子供っぽさ、もしくは青春っぽさがあって甘酸っぱい恋とはこんな感じでしょうか。(水原=鷺で、スズ片手喪失後の呉の空襲でみた鷺、スズの絵でも描かれる鷺ですが、各自で考えたほうが面白いかな)
嫁いだ先の周作さんは、奥手なのか、繊細なのか、あまりスズと打ち解けることが出来ませんでしたが、
水原が北條家に来たときに初めてスズとケンカし、水原に嫉妬してしまうあたりから、
少しずつ夫婦っぽくなっていく二人の関係がとても素敵なんですよね。
スズと戦争
戦争に全く関わりの無かったスズの幼少時代、
嫁いでから徐々にスズと戦争の距離が縮まっていき、
奪うときはあっという間にスズから大切なものを奪っていったように思えます。
スズと戦争の関係の中で、スズの心がどう変化していったかを見たことが
この作品を楽しめた理由になると思います。
まとめ
戦時下という特殊な環境下で、一人の少女が女性になり、妻となり、その中で得たものと喪失したものがたくさんあり、その時の喜びであったりとか悲しさであったりとか、その時々のスズの変化や感情を丁寧に描いた作品でした。
私はそういうものをみてスズの命、人生のきらめきのような物を感じました。
戦争という舞台でのスズの人生のきらめきを描く話であり、スズの人生を通して戦争を語るという話ではあってほしくない気がするのです。
蛇足ですが・・・家を失った人を思い出した後に、北條家に燃夷弾が落ちたときにスズが消そうとしたのがスズの疑問の答えなのかな。