「恋は雨上がりのように(TVアニメ動画)」

総合得点
81.5
感想・評価
717
棚に入れた
3187
ランキング
407
★★★★☆ 3.7 (717)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.7

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ネタバレ

kku さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

愉快な作品でした

 OP曲が私の大ファンのチコハニということで観ることは決定してたのですが、ワクワクして待っていると脈絡もないOPアニメーションに口があんぐり。オールドスタイルのキャラデザイン、45歳に恋する高校生、ときめくと
シャボン玉や炭酸が突如沸く演出、そして第一話のストーリー。
どれもあまりみたことがないスタイルでした。

 作画は雨の表現が素晴らしく毎回違う出来でこだわりを感じます
他は演出面、特にテンポ・間の取り方がとても上手で感動しました。劇場版で活躍されてきた渡辺歩監督の熟練度が半端なかったです
心の揺らぎや情緒を反映した間の取り方は2人の関係性さえをも示唆しつつ
心地よく落ち着いて観ることができました。 こういう手法は日本映画的で侘び演出とでも言うのでしょうか、とっても好きな手法です
また、キャラの頬をいちいち赤らめたりして分かり易いシグナルが目につきますが、それよりも例えば照れて髪の毛を触ったり、好きな人の靴に脱いだ靴を寄せたり、前髪を少し吹いてみたりと、愛らしい描写は見ものでキャラの個性や心情をより深く描くテクニックになっています

 さらに特筆すべきはサントラを担当した吉俣良さんの曲
2作の大河の曲を担当されてる大物作曲家さんですが非常に印象的なメインテーマでした。まるで伝えられない言葉を代弁するかの様に各シーンでピアノとストリングスが語りかけます。

 ストーリーは、まず最初に年の差の恋愛物語?恋に落ちる文脈弱くない?
え?原作は女性作家だったの?という疑問を置き去りにしたまま中盤を迎えますが心配御無用です。はっきりと答えが待っています

①モチーフになった羅生門との関連性
{netabare}
 この作品は羅生門を知ってるとさらに理解が深まるはず
羅生門の考察については色々ありますが教科書どおりの解説だと、下人と老婆の出会いにより下人は価値観が反転し、最終的にはエゴイスティックに生を選ぶという流れ。
この作品に置き換えると、男性は女子高生の純粋なまなざしに若々しい生の発露を見出し生きる活路を見出した。
女子高生は女子高生で男性の生々しい生の肯定に自らの行動が生と相反する、軽率な逃避だと気づかされる
よってこの2つのキャラは対極的な価値観の持ち主、存在でなくてはいけないので、女子高校生と45歳×1の男性にならざるを得なかったと理解できます。
 最初から会話がかみ合わないのもそのせいで、それぞれの視点から描きつつ、そういう両者がひょんな事で転換する妙を強調する為でもあると思います。しかし、ひとつを残念なのが羅生門同様不親切という点でしょうか。
店長が自分語りで補足してるにせよ、価値の変遷が多少説明不足で視聴者がありきたりな恋愛作品、もしくはそれに準じるような作品だとミスリードされやすい点です

{/netabare}

②好きなシーン
{netabare}
6話
日常のシーンと回想シーンで特にセリフもないまま~7:30埋めています
勇気のいりそうな構成ですがこの作品で私が一番好きなシーンです
夏のうだるような暑さとけだるい憂鬱重ねつつ、最後にはドリンクを飲み
かいた汗を心地良い海風が体を通り抜ける
想像力を刺激する触覚的な演出であると同時に前半と後半を暗喩するつくりになっています

7話
彼女の行動は衝動的でとても子供じみた気持ちを吐露します
その言葉に店長は確信したと思います
幼すぎると。ですから何か回りくどい言い訳して抱擁まで、持っていきますが男女のそれではなく親が子供を癒すようなシーンに仕上げていてとても美しいシーンでした。

最終話
地味に目線カットが「それから」(不倫作品、世間の価値観に抗うテーマ)から「リハビリ」の本になってるのが憎いです
ここまでの流れ上間違いなく最後のハグは感謝・友情のハグです
だけど、声かけた店長はひとつ成長して大人になる女子高生の背中に、ちょっぴり寂しさを感じたのも事実ではないでしょうか。そのサジ加減が絶妙でした
{/netabare}

まとめ
{netabare}
芥川が羅生門著作理由を身の上の不遇なタイミング(身分の違いから恋人と結婚できなかった)の中、「愉快な作品が作りたかった」と言ってたのと同様、
この作品も愉快なものとして捉えると非常によくできた作品です。
いやもしかしたら、連載がとれるヒット作に恵まれなかった?作者自身が作品に自分を投影して愉快な作品を作りたかったのかもしれませんね

店長と高校生の出会いによりあっという間に両者は価値観を変遷させました。厳密に言うと会う前から悩んでたわけですが、2人とも勇気をもって踏み出すことで最後には、最初登場したキャラとはまるで違うエネルギーを感じさせます。
その生への積極肯定がこの作品の核心で肯定することで人生は開かれ、肯定することで人生を豊かにするものだと教えてくれます
そして、そういうエゴイスティックな肯定は間違いなく「愉快」な話だと思う
{/netabare}
この作品は羅生門を引用しつつよりわかりやすくそういう「愉快」をテーマにした作品です

投稿 : 2018/05/05
閲覧 : 232
サンキュー:

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