オリヴィエ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態：観終わった
ふたりの速度
まず始めにこれは響けユーフォニアムのスピンオフです。
主役は傘木希美と鎧塚みぞれです。決して本編の主人だった黄前久美子ではございません。
タイトルに響けユーフォニアムをつけなかったことも頷けますね。
さていつもどおり映画なのでネタバレ全開でいきます。
今回は映画内のネタバレもさることながら原作「北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」も含みます。たぶん・・・
{netabare}
両親を亡くしひとりぼっちの少女リズ＝みぞれ
突如現れリズの家族となりやがて飛び立って行く青い鳥＝希美
第三者から見てもみぞれや希美にとっても童話『リズと青い鳥』とはそういう物語だ。
ある日、新山先生から提案されたみぞれの音大受験を気に、みぞれに嫉妬していることを自覚し始めた希美はみぞれと距離をとりはじめオーボエとフルートのソロの掛け合いが狂い始める。
新山先生とソロについて対話し、リズ＝みぞれ・青い鳥＝希美だと思っていたのが、自分の実力を無意識の内にセーブして演奏（籠に囚われている状態）していたみぞれこそが青い鳥で、美しい羽根を奪っていたのはリズである希美だった。
その後の練習で、自ら鳥籠をあけ大空に旅立って素晴らしいソロを奏でたみぞれとそこでようやく自分がリズだと気が付いた希美。
このリズと青い鳥の立場の反転の鮮やかさとオーボエの美しさでこんなにも感動したのは久しぶり！
原作でもグッときたところだっただけに音楽がのるとこんなにも素晴らしいものかとただただ感動しました。
希美の嫉妬や劣等感といった負の感情がその綺麗さを際立たせているのだけれどなんかようやく希美が人間らしく見えましたね。
優子が希美は身勝手すぎると言ってましたけどほんとその通りです。
のぞみぞれがギクシャクしてる最中、久美子麗奈で希美みぞれのソロ部分を個人的に吹いている場面があるのですがそれはもう見事な演奏でしたね。
お互いを信頼しているからこそ生まれるハーモニーがそこにはありました。
みぞれと希美ほんとに違うんだよね。
希美は思いつくまま喋るけど、みぞれは深く考えて整理してから喋るから返答しかけてるところで希美が次の会話に進んだり、新一年生の後輩との距離の詰め方だったり。
フルートの反射でふざけ合った後、笑って顔を見上げたみぞれの先に希美は既にいなくなってたところなんかは象徴的でしたね。
この間合いとか描写の表現が、言葉で語らせずに仕草や目線だけで表現したりと本当に繊細でした。
・のぞみぞれ問題
あがた祭りの時は他に一緒に行きたい人がいないといってたみぞれ
それがプールの時には他に行きたい人（莉々花）ができた。
この時の希美が受けた飼い犬に手を噛まれたかのようなショックたるや否やこの頃から露骨に避けるようになってましたね。
そして衝撃の演奏後
みぞれ→希美：「希美が好き」
希美→みぞれ：「みぞれのオーボエが好き」
お互いに相手からかけてもらいたい言葉がまるっきり逆なのが、本当にどうしようもなくこの二人の関係を表しているように思えて仕方がない。
希美はみぞれから演奏を認めてもらい対等だと思いたくて、みぞれは希美に嫌われたくないだけだった。ただそれだけだった。
最終的にやっぱり噛み合わない二人なのだけれど「ハッピーアイスクリーム」で最初で最後の一致を見せる。
みぞれは音大、希美は一般大学を目指して別の道をいくのだけれどみぞれはもう一人でどこへだって飛んでいける希美がくれたオーボエがあるから。
大人になったこの二人の関係性が非常に気になりますね。
・その他いろいろ
原作の感じからみぞれの後輩である剣崎梨々花はもう少ししゃんとした感じの女の子かなと思っていた（あの久石奏と仲いいぐらいだし）けれど想像以上にゆるふわ系でなんだこの可愛い生き物！
オーディション落ちて一緒に吹けないことを泣いたり感情表現が豊かでみぞれとは相性良さそうでなんか安心しました。
その裏でユーフォ組のオーディションが大変なことになってたりするのだけれどそれは久美子2年生編のお楽しみってことですよね。コンクールも今回はおあずけでしたし。
そうそう原作では梨々花はみぞれ先輩との仲を久美子に相談するのですが、今回はみぞれと希美の物語ということで希美の役割になってましたね。
水彩タッチの作画も童話のジブリさとの対比となって世界観に見事にマッチしていましたしほんと凄いですね改めて感心しきりです。
{/netabare}
それにしても本当に山田尚子さんは足フェチですね存分に堪能しましたヾ(｡･ω･)ﾉ
なんか見終わった後の熱量そのままぶつけてしまったのだけど凄い読みづらい(´・ω・`)
とにかく情報量多くて濃厚でこれでも1割も伝えられていない悲しみ。
