※アニをた獣医師 さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
二人の距離感。最高でした。 どちらが青い鳥かな?
二人の距離。愛なのか恋なのか。
少しずつ広がり始めた二人の心の距離は、話を追うに従って鮮明になっていく。
原作にもある音大入試の一件のこと。
それまではいつも明るく笑顔で振るまっていた希美。彼女が急に表情を曇らて、前髪で目が見えなくなる描写。これは良い演出。
この後、希美が音大志望の意志を聡美に告げるシーンここで、彼女の心の中に「何か。何かが生まれた。
希美の仕草が細かに描き出されていた。
そしてね、たった一言で済まそうとする仕草の1つ1つ、これが実に深い。
一歩後ず去る、爪先で地面を蹴る、後ろに手を回し、腕を握り締める、そんなの。
その一方で、みぞれはみぞれで、横髪を撫で下ろす、という仕草をしている。
それもある特定の状況で、必ずと言って良いほど。この行動をしてるんだね♪
こうした「仕草」を見せる演出が本当に綺麗に、細やかに、キャラのほんの僅かな動きにすら、何らかの意味や想いがあるんじゃないか、と思うほどに綺麗な演出だった。
この作品の大きな魅力で、そして監督の山田尚子さんの技量が発揮されていて、目に見えてわかる、耳で感じると、言えるものでした。
この「仕草」というものは、劇中の至るところで見られ、目が離せなかった。
鑑賞後の度を越した疲労感。久しいといったものだった。これらを全てを感じようとしたからかもしれないですね。
もう感無量でした。最近多いですが。
観終わった後の満足感。凄かった。
圧巻のソロ演奏。
そして…最大の魅力。
「リズと青い鳥」第三楽章、「愛ゆえの決断」における、オーボエとフルートのソロ。
この話。あることからみぞれはソロパートに関する捉え方を掴み、そしてそれを合奏の場で実践。
その演奏が、もう、圧巻というものでしかない。
それまで、みぞれが持っていたものを全て注ぎ込んだ、思いを込めたような演奏シーンには、セリフなど一つもないというのに心打たれるものだった。
この時、同時に、希美も強い衝撃をうける。
その希美の表情の歪み方、音のふるえ、取りこぼし、最後にはフルートを握り締めたまま硬直。何も出来なくなってしまう、その姿。生々しかった。
みぞれの演奏とあわせてみて、思わず涙が出た。
どうしてだろう。なんでうまくいかないんだろう。
劇中でも感動する子、賞賛する子、泣き崩れる子までいた。それほどみぞれの演奏は他を圧倒するものだったといえる。
希美はそれに何も反応せず、そっと部室をでる。
そして後を追い掛けてきたみぞれに希美は「みぞれはずるいよ。ずるい」という。
彼女の想いが爆発したと思った。
自分が一番好きなものを持っている、一番傍に居る者への嫉妬。
どうして私には。そんな想いがあったのでしょう。
希美の中に遥か昔から漂っていたみぞれへの感情の正体。それに気付き始めた希美は意図的にみぞれを避けるようになり、互いの溝がどんどん深まっていく。
心の距離が離れていく。そう感じた。
だけど、それは希美を特別な人として想ったみぞれにとっては耐えられない。
どうして離れていくの?そう想ったでしょう。
みぞれは希美の感情もよく理解出来ぬままに、希美とにたいする想い、彼女なりの言葉で伝える。
だけど通じない。
「大好きのハグ」で、希美の良いところ、好きなところを一つずつ告げるみぞれ。
それに対して希美は「私はみぞれのオーボエが好き」と一言に言い切る。、
みぞれは希美に「みぞれ(自分)自身を好きだと言って欲しかった」
希美はみぞれに「希美(自分)のフルートが好きだと言って欲しかった」ここが心打たれる。
「好き」という意思は一つでも実際には各々の求め合うものが全く食い違っている。
すれ違う。愛と恋の違いってなんだろう。
「リズと青い鳥」では、リズが何故小鳥である少女を空へと旅立たせたのか、その明確な意味はわからない。しかしリズは最後、少女に「愛してる」と告げてる。この物語において少女の立ち位置に相当するのはみぞれであり、彼女は確かにリズたる希美の元から旅立ち、その羽根を大きく広げて「音楽」というフィールドを限りなく自由に、優雅に飛び回ります。
希美の方はどうだったか。
希美はリズほどに「愛してる」という感情をのぞみに抱いて、彼女の旅立ちを見送ることが出来たと言えるのか。それともリズは羽根を持たない自分と違い、自由に大空を飛び回れる小鳥に内心嫉妬していたのか。あるいは両方か?
「リズ」という少女は慎ましく、歪みや悪意のない少女として描かれいる。しかし、それに当てはまる位置にいるはずの希美は、リズの環境とはやはりかけ離れている。
希美はリズと違って、孤独ではない、相談できる相手もいる。
その気になれば閉じられた環境を自分の手でこじ開けて、自分の居場所を作れるひとだ。
つまり希美もまた、みぞれとは全然異なるジャンルではあるかも知れないけれども、みぞれからすれば自由に空を飛び回る羽根を持つ、青い鳥。ではないか?
そして自分の手から離れたみぞれが持つ青い羽根を羨み、自分にそれが無いという現実を突き付けられて絶望し、嫉妬し、涙を流してもいる。
希美がみぞれに三度「ありがとう」を告げるシーンでは、受け止めきれない気持ちが伝わってきた。
もしかして「リズ」という存在に相当するキャラクターはこの作品にはいないのではないか?
視聴者や読者、つまり物語の外側に居た人達が、もっとも近いところにいるのではないか、と思った。
外の人間たちがリズだとして、そこに羨望や嫉妬など全く無いという意味では無いですが。
寧ろ逆かもですね。
2度目視聴。二人の演技に感服。互いにすれ違い、嫉妬する。大好きゆえ。
のぞみとみぞれ。今はまだ。もう少し。時間を。
その言葉が二人を高みへ。
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テレビで3度目。
どちらが青い鳥なのか?リズなのか?
受け取り方によってはどちらにもとれる。二人が青い鳥だと。
今回みて、さらに目に焼き付いたのは最後のシーン。
のぞみちゃんは図書館へ。みぞれちゃんは吹奏楽部。
初め、もうコンクールが終わったあと?と思った。
ですが、コンクール前ですかね?
どちらにしても、最後に二人は出会うのだと実感します。お互いを青い鳥とリズに例えていた少し前。
もう二人は自分達がどちらになっても、受け入れられるのだと、二人のやり取りをみて実感できました。