蒼い✨️ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
染みるものはあったが、これじゃ売れないと思った。
アニメーション制作:P.A.WORKS
2017年4月 - 9月に放映された全25話のTVアニメ。
監督は増井壮一。
【概要/あらすじ】
主人公・木春 由乃(こはる よしの)は、東京の短大の卒業を間近に控えた女子大生であるが、
三十社近く受けても未だに内定を一つも貰えない。故郷の母親からはUターン就職を薦められるが、
断固として跳ね除ける。由乃にとっては田舎で平凡に暮らして平凡に老いていく人生は論外であり、
彼女にとって東京は特別であり、そこで夢を見つけてチャンスを掴んで暮らしていきたかったのだ。
だが東京に居たい以外に何一つ具体性のない、ふわっとした由乃の感情を、
面接の質疑応答で企業の人にも見透かされていたのだろう。
いよいよ全滅確定寸前。卒業とともに仕送りが終わる。貯金もない。
由乃の大ピンチの折に電話がかかってくる。
以前に登録をして一度だけ仕事をした、モデルの派遣事務所からだった。
当面の生活費が必要ということもあり軽い気持ちで引き受ける。
それは、富山の田舎町・間野山(まのやま)にある観光協会の仕事で、
「チュパカブラ王国」の二代目国王に就任するというものだった。
契約内容を確認せず、イベント行事の単発バイトだと思っていたら、
仕事は「国王」という名の観光大使であり、高齢化で寂れていく一方の間野山の町興しプロジェクトのリーダー。
任期は一年。しかも、本来呼ぶはずだった往年のアイドル・椿由乃(つばきよしの)と人違いであることが発覚して、
田舎に一年間も縛り付けられたくない由乃は東京に帰ろうとする。
かなり昔のアイドルの椿由乃は既に亡くなっていたとわかり、人違いだろうが国王をやって貰おうと、
由乃を引き留めようとして、変装した観光協会会長が追いかけてきてて小芝居を打つ。
三文芝居につきあってられないと振り払ったバッグの当たりどころが悪く、会長は首を痛めてしまう。
このまま帰っちゃ悪いとの負い目と結局就活が全滅したこともあり間野山に残って観光協会の仕事をしているうちに、
由乃は町興しの意欲に目覚め、一緒に仕事をしていく四人の若い女性を仲間にするのだった。
【感想】
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』に続く、P.A.WORKSの「働く女の子シリーズ」第3弾。
モデルとなった南砺市を訪れたことが無いですので決めつけは良くないかもしれないですが、
設定上では間野山の人口は5万人ということですが、人口4~5千人の集落にしか見えないのは気のせいでしょうか?
人口密度が物凄く薄いのでしょうか?5万人も住民がいる自治体と思えないほど田舎すぎて都市開発が無いですし。
自分は人口10万人の城下町で育ちましたが、間野山よりかなり開発されてて結構賑やかでしたよ?
今作では、それぞれに別の役割がある5人の女の子をキービジュアルにして彼女らの物語と同じく、
脇を固める中高年キャラをストーリーに絡めるというフォーマットが、『SHIROBAKO』を意識していますね。
しかし、それは諸刃の剣でして、比較されやすい土壌を制作会社自身が作ってしまい、
『SHIROBAKO』で感動した人たちが観て、期待していたものと違ってたのがBDの売上の不振になってしまったかもです。
『SHIROBAKO』ではアニメ業界という目を引くテーマで仕事の面白さと厳しさを感動を交えて伝えていたのに対して、
『サクラクエスト』では、商店会、伝統工芸、数々のイベント企画etc.に関する諍い&利害調整などの話し合いが多く、
そもそもがラノベとか好きな若いアニメファンが食いつきそうな要素が極端に少ないですね。
主人公たちは特別な才能のない普通の人達です。んで登場人物にジジババ比率が高い。地味of地味。
一見してわかる即効性のアピールポイントが存在しないアニメであり、
実際に導入部のグダグダとした茶番で何話も使ってしまうがために掴みが弱く、
そこで脱落者が出てても、おかしくないです。
1クール目は町の名物をアピールしたり色々目新しい企画をしようと、思いつきを実現しようと四苦八苦。
正直なところ、由乃たちの町興しの仕事に共感したり達成感を分かち合うこともなく、
ギャラリーとして“興味ないこと”を毎回眺めていくだけのアニメという印象ですね。
実は、その1クール目の盛り上がらなさが彼女たちの方向性が本当に正しかったのか?
と彼女たち自身が考え直す契機になっていまして、
2クール目での、町の存続と未来のために本当にやるべきことは何か?という問いかけに繋がって、
人と地域の繋がりを通して、登場人物それぞれの成長物語の伏線になっています。
しっかりと全話を観ていけば、きちんと伏線を張って回収していく。
そして、地域の人間がどうやって生きていけば良いか?などのテーマを持って作られた、
メッセージ性のある真面目なアニメだというのが理解できるようになっています。
蕨矢集落の老人たちのエピソードとか、お話自体は良かったですが、
しょーもないジジイ会長とかツンツンしたババアの人間としての魅力が染み出してくるのも2クール目でありますし、
制作側の意図した作品の良さが視聴者に染み出してくるのに時間がかかる大器晩成型アニメという感じで、
昨今のアニメ業界でヒットさせていくには適さないスタイルのアニメで勿体無いかな?という気がしました。
まあ、最後に沸き起こった問題と解決までの道のりにカタルシス皆無で、
ストーリー自体も名作には届かないかなとも思いました。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。