101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
輝きは場所を選ばない。“ぼんぼる”君に輝きは灯される。
放送開始から七年。本作の舞台となった金沢・湯涌温泉では、
アニメ展開中に聖地巡礼効果も見込んで企画された、
作中描かれた架空の祭り「ぼんぼり祭り」再現イベントが今なお継続中。
アニメ効果だけに頼らない運営が功を奏したのか、
近年では放送中よりむしろ観衆を集めて、
完全に新たな伝統の祭りとして独り立ちして定着しているのだとか……。
毎年秋、祭りの日にもなると、
地元紙を埋め尽くす宣伝&協賛広告群と共に
「喜翆(きっすい)荘」の面々が帰って来て本作鑑賞の思い出が蘇ります。
私の地元・石川県では伝説のご当地アニメです♪
……などとイタい田舎自慢はこの辺りにしてw
青春のクライマックスは、必ずしも約束された大舞台、
満天の日射しに照らされた場所で展開されるとは限らない。
奮闘、葛藤、三角……。色んな物が高まれば、どこぞの縁の下からだって、
きっと新たな青春のヤマ場や修羅場を発見できるはず。
P.A.WORKSもまた、こうした発掘精神を持ったアニメ制作会社ですが、
本作の掘り起こしは独創的かつ多彩。
大体、この春、東京暮らしから突如、
北陸の旅館で住み込みで仲居として働く羽目になった女子高生。
この滑り出しからして既に、上京してビッグになる!
という青春サクセス夢想の典型とはベクトルが真逆。
自ら卑下するようで申し訳ないですが、まさに“裏日本”への都落ち。
哀れ、想い人とも引き離され、カビ臭い住み込み部屋で、
輝かしい青春の日々などいよいよ訪れそうにありません。
けれど額に汗する勤労の日々から動き出した青春は、
適宜nano.RIPEのパワフルな女性ボーカル&ロックンロール主題歌群に乗って、
何故か時折アオサギを伴いつつ走り出し、
確かにキラリと光る、思いがけず説得力のある場面を切り開いて行きます。
それに飽き足らず、スタッフはさらに、
「がんばろう!」=「ぼんぼろう!」
「死ね!」の後を継ぐ、必殺罵倒ワード「ホビロン!」
といった“新語”まで創造♪
(※尚、当たり前ですが、これらの新言語は断じて石川県の方言などではありませんw)
こうした自由すぎる開拓精神は、
時に{netabare} 旅館でサバゲーしたり、仲居さんを亀甲縛りにしたりと、{/netabare}
迷宮入りのリスクを多分にはらみますがw
思い切りの良いシーン展開が私の心にジャストミートすることが多々ありました。
(例えば{netabare} 板場にて、料理の味見でニアミスする男女……。
とかドキリ!とした記憶と共に脳裏に焼き付いています{/netabare})
主要キャラの女子高生三人+“結名姫”なども魅力的で私も好きなキャラですが、
一番のお気に入りキャラは、もう……ブッチギリで四十万スイでして……。
特に終盤、
{netabare} 親バカを胸にしまって、下した決断が神々しいです。
思えばかつて石川県でも、バブルに浮かれて人様の預金を
ゴルフ場に突っ込んで弾けた地銀などがありましたが、
そういう身の程を弁えないホビロンな経営者たちには
四十万スイの爪の垢でも煎じて飲め!と言ってやりたいです。
こうして……{netabare}満身創痍の心身に鞭を打ち、全てを終えた彼女が、
四十万スイになりたい。と天に願った孫による
最後の雑巾がけによる不意打ちから、
ホロリと崩される{/netabare}四十万スイの意外性の名場面が本作のマイベストシーンです。{/netabare}
輝くための場所を探すより、まずは動き出すことで心に灯が生まれる。
変化球なようで直球な、満開青春おしごとアニメです♪