空知 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
久しぶりに心を揺さぶられた傑作
本当に素晴らしい作品で、どう言葉に表せばいいのか迷いました。
それほど心を揺さぶられる作品でした。
{netabare}
*キャラクターの個性の違いと、南極に行く各自の動機のバラバラ感が良かった
玉木マリ:少し天然。純粋で人を疑うことがない。
押しは弱いが、実は最も行動力があったりする。
小淵沢報瀬:人に馬鹿にされても、意志を通そうとする。
最も熱いキャラ。しかし裏腹にかなり気が弱いところがある。
白石結月:可愛いアイドルだが、性格はちょっと冷めた部分も。
友情というものを知らず、誓約書を書かないと人を信用できない。
見た目の良さとは違って、実は心から笑えていなかったキャラ。
三宅日向:一見、一番楽観的で、人なつっこいが、
他者を怖がっている。誰よりも人の温もりを欲しているのに、
人を避けている。
私は、日向にとても共感しました。
真のオプティミズムはどん底まで落ちないとたどり着けないんだよね。
各個人、見ている方向も、感じ方もバラバラ。
船の中で、どっちだっけ?に、各自が全然違う方向を指さしている場面がありましたが、上手な演出ですね~
南極に行くという動機もまた、各自バラバラ
報瀬は、母親が消息を絶った場所に行きたいという強い動機がある。
玉木マリは、何となく青春したい。
結月は、友達になってくれるなら行ってみたい。
日向は、友人に裏切られ、誰も知らない誰もいない場所に行ってみたかった。
このバラバラ感が、一つにまとまって行く様子こそが本作の真の魅力です。
報瀬が、ずっと「Dearお母さん」というメールを書けずにいたのですが、
最後に
「友達ができました。ずっと一人でいいって思っていた私に友達ができました。ちょっぴり変でちょっぴり面倒でちょっぴり駄目な人達だけど一緒に南極まで旅してくれた友達です。」
ここは感動しました。本当に脚本と演出が素晴らしかったです。
*青春の「疾風怒濤」を上手にメタファーとして描いている
船酔いは、まさに青春期の疾風怒濤を表しています。
海は荒れ狂い、吐いて吐いてのたうち回る。
四人がちょっとだけ外に出てみると、海の水が船を壊さんばかりに降りかかってきます。「しょっぱいね」と笑い合う四人。
そう、人生は甘くはないけれど、四人が一緒だから笑えた。
氷は固いけれど、何度でも何度でも砕氷しながら一歩一歩進む。
力強いです。
諦めないことのメタファーとして秀逸な場面でした。
*南極は寒いが、独りじゃない
人が立ち入ることがほとんどない場所。
そこに四人は確かに立った。
動機は違ったけれど、旅を通して、それぞれの弱さや優しさを知ることができたのは、この極寒への旅があったからこそ。
この四人と対比する形で、
隊長の藤堂吟、前川かなえ、鮫島弓子、そして小淵沢貴子が描かれています。
高校生の四人とは異なり、こちらは大人です。
大人としての強さがあり、口にはしないけれど報瀬の母を思う強い気持ちがある。
小淵沢天文台を完成させるという思い。
高校生と大人の、この対比も絶妙。
未送信メールとオーロラ部分は良かったですね。
誰が何と言おうと、諦めないことの力強さ。
馬鹿にされても夢を追うことの大切さ。
目には見えないけれど、友情という財産の重み。
ラストで、高橋めぐみが「私は北極だ」という演出はう~んと思いましたが、キマリが帰国して温かく迎える形より、「私も誰よりもお前より遠くにいて、お前には負けん」(が、お前のことが好きだ」という気持ちを表現しているのでしょう。
これはこれで良かったと思います。
映像は背景が丁寧に描かれていたことと、キャラの表情描写が非常に良かった。
OP,EDとも絶賛もの。
声優陣も豪華。
{/netabare}
2018冬作品では、個人的には他の作品よりも頭2つほど飛び抜けている作品でした。
深夜アニメを子供やオタクが観るものと決めつけて、こういう素晴らしい作品を見逃した人達に、
「ざまあみろ」と言ってみたいな(笑)