MLK さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:----
無題
無礼を承知で言うが、本作は「どれだけグロいものができるか」ということに焦点が置かれ、人間というものに全く欺瞞的であり、それが本作を恐ろしくつまらないものにしているのではないだろうか。
このアニメには、今のところ二種類のキャラクターしかいない。すなわち「敵」と「味方」である。「悪」と「善」とも言い換えられる。
悲惨な環境にある主人公と謎の少女。いじめグループと暴力を振るう兄。実に分かりやすい構造である。キャラクターも大変分かりやすい。ほとんどの視聴者は主人公に感情移入し、いじめ側を嫌悪するだろう。
しかしこれは全く欺瞞である。そこには、何もせず見て見ぬふりをする我々の視点が欠けている。大抵の人間は、いじめる方にもいじめられる方にも回らない。遠巻きに見て風向き通りに流されるだけだ。それがときにどれだけ残酷なことか。その視点が、本作には全く欠けている。ゆえに安全地帯からぬくぬくと気持ち悪がることができるのだ。
グロいものを作るなというわけではない。ただ、あれだけグロテスクな記号を詰め込んでいるにも関わらず、本作からは何の痛みも感じ取ることができない。
我々の視点が欠けていることはともかく、主人公からも痛みが伝わってこない。物理的に苦しがっていたり、絶望的な環境にいても、私は彼女を見て胸が痛むことはない。
つまるところ、すべてが作り物なのだ。登場人物が戯画的に描かれているからではなく、そこにいるのは「可哀そうな少女」という設定であり、キャラクターに至っていない。
これは最近のアニメの多くに当てはまるが、あえて今回書いているのは、本作が痛みをゆがめて描こうとしているからだ。本作が、私たちの実人生における痛みのつま先にでも達しているだろうか?
悲惨なものを並べれば痛みになるわけではない。この作品を評価する風潮には、断固反対だ。(今のところ)