Ka-ZZ（★） さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

エリアスが、できるって言うのなら、やります

この物語の原作は未読です。
本編放送の前にコミックス特装版として3部作のOVAが封入されたそうですが、そちらは未視聴です。
特装版…きっとお得なんだと思いますが、何故か二の足を踏んでしまいます。
原作既読の方は、迷いなく手を出せると思うのですが、原作未読組に特装版の敷居はちょっと高く感じてしまいます。
やっぱり中味を知らずに買うのはちょっと怖いかもです…^^;

この物語の主人公は、種崎さん演じる羽鳥チセ…
彼女は生まれつき人ならざるものを見る能力を持っていました。
彼女にとってのごく自然…目に移ったモノを見て感じる…
たったそれだけの事が、「見える人」と「見えない人」との違いが生む軋轢からチセは小さい頃から悩まされ続けてきました。

小さい頃のチセは、いたって良い子…
明るく家族の事が大好きな女の子…
違いは他人に見えないモノが見えるということだけ…
でもたったそれだけの事は、チセの日常に暗い影を落とすことになります。
家族から疎まれ…生きる希望も場所も失ったチセ…
ですが、人身売買のオークションでチセは500万ポンドで落札されるんです。
チセを落札したのはエリアス・エインズワース…骨頭の人外だったんです。

これまで他人から疎まれ捨てられ続けてきたチセをエリアスは拾ってくれた…
チセは「スレイ・ベガ」という特殊な魔法資質の持ち主でもあったんです。
魔力の生産と吸収に長けたスレイ・ベガは、その価値を知る魔術師の格好の的…
自分の魔力に身体が耐えられなくなり、大概のスレイ・ベガは若くして命を落としてしまう…

それはチセも一緒…自分の魔力を制御できなければ寿命はもって3年…
彼女を生き長らえさせたい…というエリアスの意志の下、エリアスを先生として魔法の修行を行う生活が始まり…物語が動いていきます。

「世界の美しさを識る為の物語」と公式HPの記載されていましたが、綺麗な作画には何度か見惚れてしまったほどです。
でもここで言う「世界の美しさ」って、情景だけじゃないんだと思います。

人の生活の営み…
尊敬や敬い…或いは嫉妬や妬み…
人は様々な感情と向き合いながら生きています。
どれもこれも全部自分…

そしてそんな感情は悠久の時を生きてきた魔法使いも一緒…
きっと人や魔法使いとかそんなの関係ない…
生まれて育ち…そしてまた自然に還っていく…
絶対抗えない生き物の寿命は、常に私たちと隣り合わせ…
遥か太古の昔から私たちが紡いできた歴史は色々あるけれど、でも世界はもっと大きくて広くて…

そんな生き物の在り方そのもの…
自然の摂理や法則も一緒…
ふと気が付くと私たちを大きく包んでくれている…
そんな地球本来の在り方とその表情を「美しさ」と表現しているのではないでしょうか。

新しく育まれる命があれば、天寿を全うし空に還っていく命がある…
大きな輪廻の輪が私たちを捕まえて離さないから…

だからこの作品から感じるのは、静けさと…どこまでも深い優しさです。
この世に生を受けたモノ…常に平常心だけではいられません。
激しい熱情…怒りや悲しみ…
むしろ平常心で過ごせる時間の方が少ないかも…

でもこの作品の持つ独特の深い優しさが、私たちの感情の昂りを和らげてくれるような気がしてなりません。

自分の言動には相応の責任が付きまとうこと…
避けて通れない罰があること…
報いを受けること…
全ては生活を営む上での必然です。

魔法使いとしての暮らしの中で、チセは何を見て、何を感じ、何を選択するのでしょうか…
無理をすればその代償が自分に還ってくるのは百も承知です。
それでも彼女の営みの中で、彼女自身の譲れない矜持があって、時に自分を厭わず茨の中に飛び込もうとするチセ…
チセにとってこの新しい生活は、決して楽しい事ばかりではありません。
むしろ今までより痛みや苦しみを伴う出来事が次々彼女前に立ちはだかります。

それでも…と考えてしまうのはきっと思考が贅沢な証拠なんだと思います。
自分の居場所に安心できるからこそ、見えてくるモノもあると思うから…
彼女の未来…きっとスレイ・ベガとしての宿命だけじゃないと信じたいです。
自分以外の誰かとの触れ合いに温かさが感じられるこの作品…
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニングテーマは、JUNNAさんの「Here」と、May'nさんの「You」
エンディングテーマは、糸奇はなさんの「環-cycle-」と、AIKI & AKINO from bless4さんの「月のもう半分」
格好良くない曲がありませんでした。
特にオープニングの「Here」と「You」は大のお気に入り…カラオケでも熱唱させて貰いました。
「月のもう半分」もカラオケで挑戦してみましたが、こちらは音程を取るのが難しく轟沈…

2クール24話の物語でした。
原作は未だ続いているようなので、エンディングはアニオリだった様ですが綺麗に纏まっていたと思います。
…というか、ラストのチセが可愛すぎなんですけどっ！
チセのこんな表情がずっと見たかったのかもしれません。
願わくば、彼女の未来に幸あれ…