ヒロウミ さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
人を想うことは容易くともそれを伝えるのは容易くなく
多くの人の「裏腹」こそ歌劇的で悲劇的。そして失ってから全てに気付くことができたならそれはまだ幸せなのかもしれない。
久しぶりの涙活のために再視聴。10話の子を思う母親の心情に思いっきり被ることがあり号泣スイッチ連打待った無しのこの作品。
改めて視聴したのだがテレビ放送分ではやはりヴァイオレットの豊かになる心の様に比べて表現力の進歩の様子が足りない。エクストラエピソードとしてある物語は劇的なものではないがこの様子こそ必要だったであろう物語。ただ、全話見たあとに見ても10話で山場を過ぎてしまってるから後の祭りでしかなくBlu-rayの構成も悪いですね。
劇薬だらけで埋め尽くした10話まで、散々感傷的なものを煽りながら11話以降は陳腐な収まりで絵のキレイな100円均一物語。
ちゃんと収まるべき姿に収まってはいる。しかし劇薬の毒抜きに副作用はつきもので収まる姿も感動的でないと尻すぼみだったり感動的でなくなったりするものでそれはアンバランスとしか言いようがない。エクストラエピソードはちゃんと4話と5話の間に挿し込むべき物語でもあるのだが。
しかし、美しいアニメはやはり美しい。丁寧に描写された質感はずば抜けたものがある。硬いものは硬く、速いものは速くまたその逆もしかり。何より感情、表情の描写も素晴らしく言葉になっていないはずの色々なセリフが発せられているのはさすがと言うべきか。
今年の覇権アニメ最有力だったにも関わらず物語が根負けし製作会社の地力を活かしきれなかったとても惜しい作品。だが10話までの物語の流れは抜群で感動的なものだろう。
エクストラエピソード物足りないなぁ。
【以下過去レビュー】
{netabare}
父から子への愛はそうあって欲しいと切に願い見守ること。
探し物はなんですか?見つかりにくいものですか?の歌が頭のなかを堂々巡りな物語。
大切なものの喪失とそれに伴う愛しさの認識を多くの死で表現された物語は人生には必ず皆に平等に起きることがらでありシンプルかつ強烈に突き刺さる。人の弱いところ、濁ったところ、優しいところ、温かいところ、色々な姿が描写されており素直に受け止めてしまったがために私の涙腺はボロボロですね。
終盤まで変わらないテンポにはヴァイオレットの成長がさざ波のように抑揚を与えており実に見事です。急に人の心掴む立派な文章を作りあげちゃったり人の心を持っちゃうイキナリ感はいきなりだんごの名前の由来ぐらい不思議だけど私はそれより各話出てくる周辺キャラクターの心情が痛いほど身に滲みて見て見ぬふりしてましたね!盲目的に!
それでも死が激しすぎて退屈な波とも思えるが美しく見えた。盲目的に!そう、目を逸らせば苦しくない!
悪く言えば退屈、一本調子。意図的に感傷に浸らせる展開なのだろう。しかし人と人との出会いと別れは当人には劇的なことだが他人にはどーでもいいこと。物語ごとのキャラクター達の心情を理解できるか否かでこの作品の価値は大きく変わるであろう。少なからず大切な人やものを失ったりそうなることで得たことがある人間にはそれなりに強く響く作品だと思う。さすがに2クールなら厳しいが。
その場その場にピッタリハマった絵は自分が存在しているかのように吸い込まれレトロな世界観とそれに見合ったレトロな劇中音楽に酔いしれました。深みある音はやはり良いものに感じますね。
キャラクターの動きや背景、全ての絵は高い完成度で本当に美しかったしドラマを感じた。キャラクターデザインは特にど真ん中に刺さりましたね。
声優さんたちの演技も相まって作品の中身をとても濃いものにしてくれる。
が、先も話したとおり一本調子の棒読み物語は「あ、泣かせにくるな・・・」と気付いてしまう。結果泣かされる破壊力は凄まじいのだが流石に11話以降の展開はいただけない。原作通りなら大きく改変すべき内容だし改変したならば制作サイドの「不慣れ」が要因だろう。アニメのような情報の多い動的な作品と妄想、空想から作られる本とは分けるべきだったろうに。
いい作品なんですけど・・・、良作だからこそフィクションとしてのヴァイオレットの成長していく様の明らかな不足は致命的な落ち度。短絡的に喪失と希望の連鎖で単に泣かせる作品でしかなくなり、更に終盤の義手を無理にでも押し出した物語はエンドマークまで呪いのように物語を軽くしてしまっている。ディープな中身の作品であるからこそ、その茶番劇は笑えない。
それさえ目を反らして見てしまえば今まで可愛く動くだけの深夜アニメファンばかりを意識していた京アニがキャラクターデザインを大きく変え「京アニは萌えだけ」を脱却し多くの人にジャパニメーションを届けようとした、脱オタクの意識を強く感じることができた作品。
実際過去作の男性主人公にあまり見分けがつかない。ロリペチャパイだらけで幼さからカワイイだけのアピールが目立ち「美しい女」を意識できる作品は皆無だったと思う。そう、カワイイに溢れているが美しいアニメが無かったなぁ。この京アニに対するイメージは私の知識不足によるものだろうがそう思えるのだからどうしようもない。
それでもカワイイだらけの京アニ作品大好きなんですけどね!ちゃんとアニメしてるから。
狭い世界だけではなく高い意識で制作された(かもしれない)懐の深い作品だが本当に終盤の物語はナニコレなんだよなぁ。神作と成るべき作品だったのだが実に惜しい。
ただ、10話までグズグズ泣けるストーリーでオススメなのは一気見です。
大切な人を思い出して。大切な自分を思い返して。これから先あなたはどうする?ありのままで良い。ただ、もっと思いを伝えよう。{/netabare}