STONE さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
旅を通じて変わっていく
まず女子校生が南極に行くというSFやファンタジーよりは現実的であるが、そう簡単に
できるものではないというメインモチーフの妙に惹かれた。
南極と言っても冒険モノ的要素はあまり無いが、その分キャラ達が旅を通じて、友情を育み、
人間的成長を遂げていく過程が堪能できる。
そういう意味では南極へ行くという物理的な旅であると同時に、現在や過去から動けずにいる
キャラが前へ進む精神的な旅でもあるような感じで、現在から動けないのを象徴しているのが
玉木 マリで、過去から動けないのが小淵沢 報瀬といった印象。
とにかく話作りが上手く、ていねいな印象で、オリジナルでもここまで過不足ない作品は
そうないのでは?
見せ方も秀逸で、加えて細かい伏線を積み上げているのが各クライマックスをより効果的に
盛り上げている感じ。自分が年を取って涙もろくなったせいもあるのだろうが、何度泣かされた
ことか。
特に終盤からラストへの演出は素晴らしく、小淵沢 貴子のPCのメールの件は泣かせると同時に、
メールの未読数で報瀬の止まっていた時の長さを見せ、同時にようやく前に歩み出せることを示唆する見事な演出。
そして、貴子の出せなかったメールとオーロラの絡ませ方も良かったが、このオーロラに関しては
更にマリと高橋 めぐみの問題にもうまく絡んでおり、この辺の話作りは本当に凄い。
キャラに関しては中心となる4人の女子校生はいずれもキャラがよく立っており、非常に魅力的。
主筋とは別に女子校生4人の掛け合いのようなやり取りもこれまた楽しく、ここではマリの
天然さと、報瀬のポンコツさがいい味出している。そして、日常のお馬鹿な感じが4人の仲の良さを
描くと同時に、シリアス展開に対するコントラストになっており、シリアス展開が更に映える
ようになっているような。
彼女達を取り囲む大人キャラもなかなか魅力的だったりするが、藤堂 吟を始めとする3年前の
観測隊の参加者も3年前の貴子の死から止まってしまった部分があるようで、単なる女子校生4人に
対する保護者的キャラなだけでなく、彼らもこの旅で過去から前へ進む存在のように思えた。
複数の女子キャラが主体の作品の場合、若手中心のキャスティングになることが多い。
それはそれでフレッシュさを感じられたりするのだが、本作はある程度のキャリアがあり、かつ
演技力のあるキャスティング。
で、本作に関してはこれが正解という印象で、高い演技力を要求される部分が多く、この
キャスティングによる演技が作品内容に相当貢献している感があった。
キャストと言えば貴子役の茅野 愛衣氏。彼女は作中時間では既に死去している役が多い印象が
あるが、本作でもそうだったので「またか」と思ってちょっとおかしかった。
南極行自体はリアリティ寄りな印象で、色々な細かい描写がかなり取材をしたのだろうなと
思わせる。
2020/04/14