「月がきれい(TVアニメ動画)」

総合得点
94.0
感想・評価
1809
棚に入れた
7624
ランキング
8
★★★★☆ 4.0 (1809)
物語
4.1
作画
4.0
声優
4.0
音楽
4.0
キャラ
4.0

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ネタバレ

タマランチ会長 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

マンガ的文法を採用せず、実写映画の文法で成功したアニメ史に残る革新的作品

 この作品は普通と違う破天荒な登場人物とか、ドラマチックな展開とか、「面白いマンガ」の文法を一切採用していません。あくまで実際にあり得る範囲のエピソードの中で、男女で言葉を気楽に交わせるような雰囲気ではない中学生のリアルな恋愛模様を描いています。邦画によくある文法で、それをすんなり入れる人は、この作品を十分に楽しめます。それができず、マ「主人公に魅力がない」「どうしてあんな男に惚れるんだ」と、マンガ的文法に当てはめてっしまう人は楽しめません。この作品は「実写映画さながらの思春期のリアルな恋愛を描いた作品」です。

 たとえば、{netabare}最終話、小太郎が茜の入学した私立に落ちて、地元の公立に入学が決定。遠距離を余儀なくされたところで、二人で公園デート。バイトして電車代稼いで千葉まで会いに行くという小太郎に、茜は大変だろうから自分からも行くよという。しかし、小太郎はいいよいいよと取り合わない。そこで急に茜が、千夏にコクられたの、何で黙ってたの?とか聞き出す。そうだけど、断ったよという小太郎。ここで、茜は涙を流します。(ここのシ―ンで、茜は一度はぁぁと大きく息を吐きます。この描写は実にリアルだし、意図的に入れないと決して描かれないシーンです。)その後支離滅裂に思いのたけを中途半端に小太郎にぶつけ、いきなりキスをして走り去ります。茫然自失の小太郎。
 このエピソードですが、フツーの恋愛マンガの文法なら、茜は思いのたけを読者にも分かるように論理的にいうところでしょう。例えば、「私だってあなたのために何かしたいのに、なぜさせてくれないの!」とか。でも、本作では支離滅裂で、茜の思いが論理的に語られることはありませんでした。さまざまな思いが入り混じり、不安が募った結果、感情が先走ったということでしょう。これは明らかに恋愛マンガの文法じゃありません。相手に思いを言葉で伝えられず感情をぶつける。あるあるです。実にリアルです。
 ラストの電車を追いかける展開も、マンガの文法から逸脱していました。マンガやドラマなら、改札を抜ける寸前でつかまえて思いのたけを伝えるか、茜が走る電車の車窓から叫ぶ小太郎を見つけ、手を振るところでしょう。それを良しとせず、あくまでリアルに、あるあるな展開にしながら、大きな感動を観ている人に与えています。実に秀逸です。{/netabare}

 中高生の男女の人間関係で、気軽に話せるようなことは日本全国でもまれなはずなのに、漫画、アニメの世界では当たり前のようにそれがクリアされているというマンガの文法(お約束)に、「中高生なら、男女で和気あいあいとコミュニケーションをとれることなど現実的に稀である」というリアルを持ち込んだ作品は他にないでしょう。邦画の世界では時折みられますが、漫画、アニメのジャンルで、それを正面から描き、一般に受け入れられたのは本作が最初かもしれません。これは、ガンダム以前のスーパーロボットが「唯一無二の存在」だったのに対し、「量産型、試作タイプ」などの現実的なリアルを持ち込んだくらいのインパクトがあったといえます。終始一貫してマンガの文法を用いない。それでいて多くのアニメファンに受け入れられた。こういう作品が後に続くなら、マンガの文法を用いずに実写映画の文法を用いた、革新的な作品になる可能性があります。


以後、某掲示板で投稿した感想を、アニこれ風に書き直して、1話から載せていきます。

1話
 高校生まで女の子と話をするだけでも、周りの目を気にしてキョドってしまうような昭和の田舎男子だった私としては、こういう感覚はよく覚えているし、思い出しただけでも気恥ずかしいものです。経験上、女の子と話をしようものならあいつに気があるのかとかヒューヒューとか冷やかしが飛ぶのが中学生の世界だと思っていますので、巷の作品は不自然なくらい男女が気楽に話をしています。リアリティーに欠けています。(笑)
 ファミレスで{netabare}家族と外食中に異性のクラスメイトと鉢合わせをすれば、もう正気ではいれません。背伸びをして飲んだこともない大人のドリップコーヒーを頼んで見栄をはるのもまた分かります。チャラそうな友人とつるんでる男子に、「今日のことは内緒にして」と頼むのも不自然ではありません。{/netabare}すべて思春期の自意識過剰がさせていることです。その自意識過剰をかなり突っ込んで描けている作品は珍しいでしょう。生まれついてのチャラ男やビッチじゃない限り、共感できると思います。
 展開が遅いですが、そういうのを楽しむ作品ではないでしょう。かなり面白いので、これからの期待大。大事に鑑賞していこうと思います。

2話
 運動会か~~。{netabare}作中では走る女の子のおしりや首元からのぞくオッパ●に気を取られておりましたが、私も走る女の子の揺れるバストに目がいったものです。結局この二人って、一度ファミレスで鉢合わせしたってだけのえんでしかないんですけど、そういうのが特別に思えたりするもんなんですよね。なんたって、男女の接点が希薄ですから。{/netabare}
 
3話
ぐわぁぁぁ~~~悶え死ぬ~~{netabare}
「月がきれいですね」=「好きです」と言いたいところ、それが言えないからもっととんでもないことを口走る、それが「つき・あって」ですね。こういうオチのうマンガを私は描いたことがあります。気恥ずかしいので記憶の隅に葬り去っておりましたが、思い出してしまいました。{/netabare}
 この頃のリアルな恋愛模様をしっかり美化できています。もう何この気恥ずかしさは!もうダメっす。

4話
 携帯が普及してから待ちぼうけとかすれちがいとか難しいシチュエーションとなりましたが、{netabare}先生に取り上げられる、女友達の携帯から連絡をするなど、うまく利用できていたことは感心。焦りが背中を押す。うん、もうキュンキュンっす。{/netabare}

5話
 逢引きの図書館作戦が{netabare}失敗、放課後の古本屋で成功。しかし、茜の親友から茜に報告メールが!
 親友と分けありとわかって気になり、恋愛感情を抱く。なんでもないキッカケで簡単に好きになる。これが思春期というものでしょう。私はあのショートカットの女の子好きだなー。よく笑う、快活な感じの娘だ。
 {/netabare}あの年代で、女の子と手をつなぐことなんかほとんどないだろうし、私自身、手をつないだ経験は、運動会のフォークダンスの練習のときと(本番で手をつなぐと、変態のそしりを受けると思っていた)、運動会で大きな旗を作る作業中に、絵具で手が汚れていて袖をまくれないときにまくってもらった思い出があるだけ。そのときは、女の子の手というのは、こんなにもやわらかく温かいものなんだな~と感心してしまったことを思い出します。もちろん欲情まではいきませんでしたが、ほのかな恋愛感情は持ちましたね。二人っきりで手をつなげた安曇くんは幸せ者です。

6話
 相手のことが頭から離れなくて物事に集中できないというのはよく分かります。まさに恋ですね。{netabare}茜は大会で玉砕、安曇くんは純文学の才能ないとか言われてラノベ転向を勧められます。逢引きの図書館で、二人は「ちゃんとやる」と約束しましたが、茜は競技に没頭するというのは分かりますが、安曇くんはどうする気なのでしょう。
 しかし、茜の友達はさっぱりしたいい子だな~。三角関係のどろどろ展開はさけられそう。
 最後のオマケの借り物競争ネタで、あの河合奈保子の名曲「けんかをやめて」がつかわれていて、ちょっと笑っちゃいました。眼鏡っ子好きだよ~。眼鏡だけもってかないで、彼女の手を引いていけばいいのに。まあ、中学生だから、そこまで気が回らなかったかな。
 学校などのシーンで、人が歩いているのはCGですね。CGっぽ過ぎでぎこちないのが残念。この辺改善されるとよいのだが。{/netabare}

7~8話
 {netabare}7話グループデートでの付き合っている宣言語のキス寸止め、8話での縁日キスなど、着実に恋が進展していますね~。確かに7話が初デート、8話が2回目のデートですから、キスまで早いというのも分かりますが、風鈴祭りの幻想的な風景から、誕生日プレゼント、もふもふお芋のやわらかい感触も相まって盛り上がってしまったのでしょう。男なんてフルタイムでそんなこと考えているもんですから、ありえないことではないかと。{/netabare}相変わらずのムズキュンですが、私の感触としてはリアルからもうファンタジーの世界に入ってきましたね。(笑)

9話・10話
 引っ越し話キター―!!さらに、遠距離自然消滅を良しとしない小太郎のプロポーズが飛び出しました!ほとんど勢いですが、もう大人の世界に突入っすね!
 細かいところを少し。2話くらいで、小太郎の短距離走のスタートは、拳をぎゅっと握り、位置についてでかまえ、用意で右手左手を入れ替え、ドンで走り出します。これはだれもが小学校で意味なく教わる様式です。対して、茜の陸上部の練習のダッシュは、スタンディングで腰を曲げ体重を前足にかけ、腕を脱力してだらんと下げてかまえ、笛の合図で走り出しました。これは最近の練習方法です。スタッフはこの辺意識しているのかどうかわかりませんが、素人と部活やっている人の差をさりげなく描けていて、リアリティがありました。{/netabare}

11話
 いかん…母親の愛に思わず涙が…。{netabare}キロロの「未来へ」でやられたっす。
男の子の場合、もっとも効果的な目の前のニンジンはやはり女の子なんですよね~~~。分かります分かります。{/netabare}


12話
 ぐわあぁぁぁぁ~~~…死んだ・・・ 久しぶりにアニメ見て涙腺が崩壊しましたよホント。美しくもリアルな初恋を描き切りましたね~~~。素晴らしかったです。
 この作品を観て、自分の初恋と重ね合わせて共感した人は多いでしょうし、そういう人が楽しめた作品だと思います。私は久々の「傑作」もしくは「名作」と評価します。理由は、「アニメらしさを生かしながら実写映画さながらのリアルな表現で、初恋を見事に描き切った。これまでこのような作品はなかった。新しいジャンルを切り開くかもしれない。」という点です。

投稿 : 2018/06/30
閲覧 : 410
サンキュー:

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