yuugetu さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
全体の纏まりが見えた第2シーズン
2017年10月~2018年3月放送のテレビアニメ。全25話。
相も変わらぬクラシカロイド第2シーズン。……いや、ちょっと変わったかも。
若干カオスぶりが緩和されるとともにハートフルな話が増え、ワタル(ワーグナー)を中心としてメインのストーリーが強くなっています。サブのストーリーでクラシカロイド達の「音楽に対する向き合い方」も変わらず掘り下げられ、テーマを補強する形式が出来ていたと思います。
1期ではトラブルメーカー・手のかかる大きな子どもといった印象だったクラシカロイド達ですが、2期ではワタルを見守る(あるいは立ちはだかる)位置になります。
全体としては1期より良い意味で子ども向け寄りのお話になった感じ…ですが、規制スレスレっぽい描写はまだちょっとあるw
おそ松さんがあったからか、藤田陽一さんは馬引圭さんに監督を引き継ぎ、1期から脚本家も少し入れ替わったりしています。キャラデザが二人に増えていて、衣装などもさらに良いデザインが増えました。
ムジークは相変わらずバラエティに富み、演出もビジュアルもすごい派手でシュール。準備期間が短かったためか、ストーリーに沿う形で1期のムジークも度々使われています。
ワーグナー担当の蔦屋好位置さん以前から好きでしたし、ドヴォルザーク担当の千聖さんも素晴らしかったです。曲数が少なめになってしまったのは残念ですが、新しい風を吹き込んでくれてさらに楽しい半年間となりました。
作画は忙しそうな回はありましたが、全体としては良い回が多かったです。サンライズの作画はやっぱり好きですね。多少忙しくてもしっかり個性的に仕上げられる、上手なスタッフが多かった印象でした。
【キャラクター】{netabare}
ワタルの描写は全編通してとても良かったと思います。家族の中心に子どもがいるの好き。ワタルは気づいてなかったかもしれないけれど、2期最初のベトさんのムジークはワタルへのメッセージでしたし。
自分の殻に引きこもって自分を守ってくれる姉さんを作り出したのは、歌苗がいつも自分を守ってくれたっていう意識からかな。
これから本当の意味で音楽に向き合うことになるのでしょうけど、ぜひそれも見たかった。
クラクラの二人はずいぶんアクが抜けましたね。1期よりも可愛い姿が色々見られて楽しいけど、毒が弱くなったのもそれはそれで寂しい。
第11話「塩しかねんだよ」好きでした。2人の喧嘩っぷりも含めて好きだったクラクラファンならソルクラも好きでいてくれると思うんですけどねえ…。衣装チェンジ&キャラ変なんておいしいパフォーマンス、黒歴史で終わらせるにはあまりにも勿体ない。というか私はソルクラ大好きですよ!
バッハ様、ワタルへの対応で悪い癖が出てるなあ。確かにバッハはクラシカロイド達の厳格な父親という側面を強調されてきていましたが、ワタルに対して上から目線はまずかった。
ですがその後は響吾を頼ったり日芽歌に振り回されたりクラクラに後をまかせたり、以前とは違う一面も見られましたね。三弦さんとのやりとりも信頼関係を感じてとても良かったです。
三弦さんのワタルへの大人な対応には関心してしまいました。仕事だからというのも事実なんでしょうけど、ちょっと責任感じて困った顔でフォローしているのが良いなあ。2期で一番株が上がったキャラかも知れない。
それにしてもバッハ様大好きすぎるでしょw
{/netabare}
【ストーリーについて】{netabare}
1期ラストでは宇宙まで巻き込んだマクロな展開。2期はワタルのエゴをしっかり描いたミクロな展開。どちらも「音楽に対する向き合い方」に言及しているのが良かったです。
それが根底にあって、その上でワタルの我儘(承認欲求)とそこからの脱却という形に収まったのはとても好きでした。
前世の記憶をある程度持っている他のクラシカロイド達と違い、ワタルは音楽を生み出す動機がはっきりしないことが話の肝でした。
響吾の口からワタルはムジーク暴走の兆候があったから途中でワーグナーの音楽を聞かせるのをやめたと語られています。クラシカロイドは「歴史的音楽家の記憶を持った別人」ですから、その記憶や気持ちが中途半端にインプットされてしまったということなのかな。
そう思うとワタルだけは本当に子どもみたいなものなんですね。
大切なのはムジークを奏でられることではなくて、音楽をどんな想いで奏でるのかということ。
ワタル以外のクラシカロイド達は既に自分のスタイルを持っている。1期序盤からずっと描かれてきたことがラストまでダメ押しと感じるくらい強調されているのが良いですね。
そして我があるから他人と繋がることが出来る。クラシカロイド達は皆エゴイスティックでアクが強いのに、人の心に無関心なわけではありません。(…歌苗の気持ちはもう少し考えてほしいけど)
モツがムジークを取り戻すきっかけになったのがワタルのムジークの悲痛な心の叫びで、そこから連鎖的に共鳴していき、ベトさんだけは逆に自分からムジークを発動するのは上手い展開です。
最後にワタルから皆へごめんなさいの一言があっても良かったとは思いますが、憎まれ口で終わるのも本作らしくて良いかな。
クラシカロイド達にとって音羽館は本当の家になって、心から居心地がいいと思うようになったから出ていくのでしょうね。結局戻ってきちゃうんですけど。
そして最終回でクラシカロイドの謎が増えてしまいましたね。ハッシーは卵から孵して育ててるはずだし、発動したムジークはOPですし。ハッシーを研究してクラシカロイドの着想を得たということでいいんだろうか…
最後に謎を深めていく感じ嫌いじゃないですw{/netabare}
【気になった点】{netabare}
欲を言うとベトさんのしっかりしたメイン回が一話欲しかったかな。第2話のムジーク「無敵のソナタ 〜交響曲第7番より〜」だけで終わらせず、ワタルとの関係ももう少し掘り下げて欲しかったですね。
あとやっぱり音羽夫妻の自由すぎる行動はなんともコメントしづらいですねえ…歌苗はもうちょっと怒って良いよー。
ワタルとの描写については、子ども向けとしてあれで良いと思うんですけどね。
第9話「〇のない世界」で、パクリ疑惑みたいな話を入れちゃったのは子ども向けの音楽アニメとしてははっきり言って良くないと思う。これは明確に悪い点でした。
シューさんがきちんとフォローしたのに、最後にオチを付けてひっくり返してしまったのも駄目だと思います。こういう題材を扱うのなら、最低でもシューさんの言葉で良いラストにしてそのまま終わらせるべきでした。
{/netabare}
1年分通して主題が纏まっていて、長期アニメとして考えるとなかなか良かったです。サブのストーリーが割と上手く積み重ねになっている点も評価して良いと思います。
シュールギャグの子ども向けとして大らかに見られるのなら楽しめると思います。(2018.4.2)