岬ヶ丘 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
それぞれの「宇宙よりも遠い場所」へ
結論から言えば今クール一番、あるいは今年一番のアニメになるかもしれないほどの良作だった。まず耳に馴染みのない変わったタイトルに心惹かれ、その指し示す場所が南極であることを知り、ますます興味をそそられる。女子高生が南極に行くという誰も経験したことのない非現実的な物語は、不思議なことに誰もが共感できる良質な青春群像劇だった。
一話の時点で日本の普通の女子高校生・キマリを中心に、そこから南極にいく過程を説得力をもって丁寧に、キャラクターの心理描写と重ねながら、一歩ずつ描き重ねていった印象。その後南極に着いてからもメインキャラの過去やしがらみを丁寧に紐解きながら、毎話のまとめやカタルシスも十分。まるで毎話が最終回のような高い完成度だった。
南極の描写については、南極に関する必要最低限の情報は台詞や美術で伝えていたと思うし、小道具・背景の美術面も非常に力が入っていた。海上自衛隊なども協力しているので、南極を舞台にする本気度も伺える。ただ南極に多少詳しい人からすると、目新しい情報は少なく拍子抜けだったかも。
この作品の最も素晴らしい点は、キャラクターの心理描写とその積み重ね、そしてそれが濁流のように一気に流れ込む見事な演出。4人それぞれが南極へ行く・行った後も喧嘩したり助け合いながら交友を深めていく。それぞれのキャラクターの掛け合いやテンポ・間などが秀逸で随所にスタッフのいい意味での遊び心も感じられる。何気ない日々の一幕にキャラの性格や成長がうまく落とし込まれている。そうした積み重ねが爆発するのは、終盤の報瀬と母とのエピソード。母を失った悲しみを埋めて有り余るような、メンバーの成長や絆の強さを感じさせられる物語だった。
その他音楽面でもOPのワクワク感溢れる楽曲や遠近感を上手く使った楽しい演出、豪華声優陣による魅力的なお芝居など全体的なクオリティーが非常に高い。オリジナル作品という事で先が読めないという長所を活かした、Cパートでの気になるひきなど細部までのこだわりを感じられるつくりだった。
結局この作品を突き詰めると、ヒロインたちが行かなければいけなかった場所は別に南極でなくてもよかったということになるのかもしれない。そこは北極でもいいし、極論キマリたちが通う学校の隣町でもよかったのだろう。大事なのはこの4人のメンバーでなければいけなかった、あるいは行けなかったという点に尽きると思う。個性豊かで魅力的なキャラクターたちとここではないどこかへの旅を一緒に駆け抜けた結果、こんなにも美しい景色に出会うことができて率直にとても嬉しい。
「宇宙よりも遠い場所」というタイトルに込められた意味は色々あるのだろうが、私たち一人一人にもそういう場所がきっとあるのだろう。キマリたちのように私にも、そんな場所があること、そしてそこへ一歩踏み出す素晴らしさを伝えてくれるような、月並みだが記憶に残る感動的な作品だった。
視聴日 18/3/28