鸐 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
夜通しみてしまう
日本の伝統芸能である落語の噺家を取り上げた人間ドラマです。
語り手は稀代の天才噺家で、その一生を描いています。
題材的に堅苦しいイメージがあり、ちょっとでも興味を持ち合わせていなければ観なかったことでしょう。しかし、見始めてしまえば、難アリ苦アリの人間ドラマにすっとのめり込んでしまいます。
声優が落語に詳しい演技派の方ばかりだし、シックなBGMもイメージとぴったりなので、音だけ聞いていてもかなり世界観に浸れるのですが、ふとした仕草や表情がその良さを何倍にも引き上げます。
翌日が休日でもないのに夜明けになるまで見続けてしまったのは久しぶりでした。
物語のことを語ると八代目有楽亭八雲の保護者としての決意と落語に対するストイックさがカッコいいです。どの世界でもそうですが、何かに熱心に打ち込む姿は惹かれるところがあります。物語の世界だと大抵そういう人は敵の大将にいることが多いのですが、師匠であり、友人であり、親であり、想い人であり、その人を取り囲む複雑な人間関係があるから、一方的でない不完全な魅力を生んでいると感じます。
そして、この作品を語る上で外せない登場人物がもう一人おります。
八代目八雲が伝統を極めるものであれば、弟子の与太郎は伝統を昇華させる者でありました。師匠の八代目八雲とは真逆のタイプですが落語に対しての真面目さは良く描かれていました。特に師匠をたてて敬う姿勢は尊敬したくなるほどの清々しさでした。
ただ与太郎には、思うところもあり、父親や旦那としての責任があまり描かれず、人間臭さに乏しい気がしています。
家族を顧みなければ、それはそれで人間臭さも出てくるというものですが、この人の場合は、あまりに許され過ぎている感じがします。
八代目八雲を主人公に建てるためでしょうか。
少々の違和感は残りましたが、それはこの作品の完成度があまりに高いので、そういった些細な事が気になったのでしょう。