ossan_2014 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
一歩だけ外へ
キャンプは、いい。
それに加えて主人公がバイクで移動するとは、どこまでオジサンのツボを突いてくるのだろう(笑)
こうした、男子であれば普通の趣味を、女子高生が行えば「作品」になってしまうのはなぜなのか、突っ込んで考えるとジェンダー的に面倒なのでやめておこう。
冒頭、なんだか見覚えのある道を主人公が昇っていくなと思ったら、やっぱり本栖湖だった。
あまり「聖地」というものに興味はなかったのだが、なるほど馴染みの土地が登場すると強く親しみが出るようだ。
あの道で、ガードレールのそばで鹿が通り過ぎる車を眺めているところを目撃したことがあるが、そこまではアニメには描かれず少し残念。
キャンプといえば山の中の空き地でするのが常で、ほとんどキャンプ場を利用したことはない。
キャンプ場を利用するときは、なるべく人の来ないマイナーなところを探していたものだが、キャンプをしない人にとっても、人が多くてテントが軒を接して並んでいる「キャンプ」は、少しイメージと違っていると感じられるのではないだろうか。
そうした意味で、シーズンオフで他人のいないキャンプ場は、キャンプをしない人のイメージにもうまく合った導入として、よくできている。
物語のスタートが夏であれば、本栖湖のキャンプ場であっても(失礼)テントがずらりと並び、あまり「キャンプ」が魅力的には見えなかったかもしれない。
キャンプ初心者のユルいアウトドア活動を描く物語だが、その「ユルさ」は、初心者の初歩的なキャンプ、を意味しているのではないようだ。
「初心者」や「ベテラン」は、経験による知識やテクニックの差であって、キャンプの「スタイル」自体に「初級」や「上級」があるわけではない。
「ユルい」キャンプは初心者向けのお手軽なもので、「上級」へと進んでいくための入門編などということはない。
理屈を仕入れたり、高機能のグッズを収集する前に、まず980円のテントと手持ちの台所用品をもってキャンプ場へ行くほうが正しいし、山中の空き地で拾った薪だけで調理や明かりをまかなうキャンプと比べて、「レベルが低い」わけでは決してない。
この「ユルさ」は、日常生活から「一歩だけ」外に出る、その距離感に由来するのだろう。
本作のキャンプでは、主人公と仲間たちは、常にスマホで繋がりあい、街の夜景を眺めつつキャンプを楽しむ。
キャンプをしない人のイメージでは、「キャンプ」は、「街」から遠ざかる=他人や人工物のない空間への移動だろう。
わざわざ山中の空き地へ出かけて行ったオジサンが求めていたのも、そんなものだ。
しかし、本作の「野クル」メンバーたちは、アウトドアに出つつ、「街」から完全には離れない。
テクノロジーや人工物とつながり続けつつ、「キャンプ」する。
この「一歩だけ」野外に出る距離感が「ゆる」キャンプであり、キャンプ経験のある/ないを問わずに視聴者を惹きつけるのだろう。
この作品を見て「キャンプを始めよう」と思わせるようなところはないかもしれないが、別に入門ビデオではないのだから、これでいいのだ、と思う。