Tnguc さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
【お気に入り】 吹奏楽を題材としたスポ根アニメ、心が響くこと間違いなしの名作
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吹奏楽部を題材とした青春モノであり、弱小チームが全国大会を目指す王道のストーリー展開となっているが、吹奏楽部が抱える複雑な人間模様や、主人公姉妹の不仲な関係、主人公ながらも若干スレている女子高生・黄前久美子(おうまえ・くみこ)などが写実的なアクセントとなっていて、ビジュアル面に反して内容はとてもドラマ的。序盤のサンフェス編はわりとトントン拍子で進んでいくが、その後の展開は真面目な練習ばかりで、本作と同じ脚本家が手掛けた「けいおん!」や「宇宙よりも遠い場所」などと比べると実にスポ根をしている。その情熱の火中で少し物冷めていた久美子が、音楽や仲間を通して青春を再熱させていく様子は素直に共感させるパワーがある。しかし、この作品は吹奏楽の魅力を発信するだけの異質なスポ根ではない。楽器は自分を映す鏡でありながら、そこに映るのは理想と現実のギャップばかり。限られた時間の中でその焦燥感と戦いながら「特別」な自分を求めて練習を重ねる生徒たちの瞳はいつも不安で震えている。吹奏楽部の部員は一緒に練習をする仲間であると同時にレギュラーの座をかけて競うライバルでもある。そこでは、勝ち取る者、挫折する者、敗北する者、自分の夢を誰かに重ねる者、まるで松本大洋(まつもと・たいよう)の「ピンポン」を読んでいるかのような夢と現実の厳しさが描かれていて胸が締め付けられる思いに駆られてしまった。放課後、いつもの3人が初めて一緒に演奏をした「きらきら星」。夕陽に照らされてプリズムのように乱反射した教室で残響したその音色は、まさに青春の輝き、情熱の響きだった。
個人的評価:★★★★☆(4.5点)