岬ヶ丘 さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
メッセージはシンプル、魅せ方はスペシャル
初恋の幼なじみ、みょんちゃんに再会した西。彼女が姉のヤンと営んでいる焼き鳥屋に招待されたまではよかったが、借金の取り立てにきたヤクザにあっけなく殺されてしまう。しかし、将来に未練たっぷりの西は、神様に逆らって再び現世に舞い戻る。とことんやると神様に誓った西は、ヤクザに追われて危機一髪のところで、今度はクジラに呑み込まれてしまう。そこで出会ったじーさんはなんと、クジラの中で30年以上も暮らしていたのだった。(公式サイト ストーリーより引用)
物語は未練たらたらで死んだ主人公がもう一度生まれ変わって人生をやり直し、みょんたちと次々に奇妙な体験を重ねていく、というシンプルなもの。クジラに食べられてその中で生活するというのは奇抜な設定だったが、作品のテーマには必要な設定であり、ユーモアも感じられる。終盤のカタルシスも最高で、ラストの余韻もしっとりと楽しめる。
作品全体を通じて感じたのは、「生への激しい肯定」・「未来への強い希望」といったところだろうか。むきだしの強い感情をそのまま自由に、想像豊かにありったけの熱量で描き切っている。特にそのメッセージが主人公の言動や、特にクジラからの脱出シーンに映像として強く表れている印象。
その他実写的な技法を組み合わせた奇抜な演出、自由に形を変える神様、独特の画と構図、とにかく魅せ方がスペシャルで唯一無二の作品。
人物描写に関しては直接的なセリフでの説明というよりも、速いカットの画でキャラクターの過去や抱える事情、あるいは未来を印象的に描いており、そこも湯浅監督らしい演出。このある程度の余白のあるバックボーンの魅せ方も効果的な演出だと思う。
声優さんは吉本新喜劇の芸人さんということを作品を見る直前に知ったが、技術的な部分ではそこまで違和感もなく問題なく楽しめた。キャラが関西弁というのも、不思議と言葉をメッセージとして受け取るときにすっと入ってきた。関西弁の素敵なところだと思う。
見れば生きることに前向きになれるというか、ならざるを得ない。湯浅監督を語るうえで絶対に欠かせない、クオリティーの高い意欲作。
視聴日 18/3/11