Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
本当の悪魔を、まだ誰も知らない…
きっと誰もが一度は耳にしたことのある不朽の名作です。
原作者が永井豪先生であること…
身体は悪魔だけれど心は人間のままで、人間を守るためデビルマンは悪魔と戦い続けた…
作品の名前だけでなく、この様な設定だって我々の中に深く浸透していると思いますが、私が原作を読んだのは、もう何十年も前…
しかも、原作も飛び飛びで全部読破した訳ではなかったので、放送が楽しみではありました。
でも、視聴する上で障壁が無かった訳ではありません。
一番の障害は「Netflix」でしか視聴できなかったことです。
きっとこの作品だけしか放送されなかったら、円盤のレンタルまで視聴を我慢したと思います。
でも、調べてみると「Netflix」から発信される作品がまだまだあるんですよね。
毎期必ずアニメが放送されるかが分からないので、見なくなったら何時でも簡単に解約できる事を踏まえ、結局申し込んでしまいましたけれど…
実際に申し込んでみて分かったこと…それは、過去作はもちろんのこと、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「Fate/EXTRA Last Encore」など旬の作品も結構取り扱っているんです。
それに、申し込みプランによってはタブレット端末にダウンロードして移動しながら視聴する事もできるんです。
私のように通勤時間をアニメ視聴に充てている方にとっては、かなり使い勝手の良い機能だと思います。
そして視聴に踏み切ったもう一つの理由…
それは、これまでに映像化された数多くの作品は、原作の最後までを描いたモノではないということ…
そして、この作品でついにラストまで描かれるということ…
もともと原作が発表されたのは1970年代前半…つまりこれまで40年以上の月日が流れているんです。
永井豪先生の50周年という節目がいかに重みを持っているかが推察されます。
こうして本編の視聴に踏み切った訳ですが…
画面を一目見て「どこかで見たようなタッチ…」と思ったら、監督は「ピンポン THE ANIMATION」を手掛けた湯浅政明さんだったんですね。
キャラの躍動感を強調したり、不鮮明なタッチの中に不気味さや奥深さが見え隠れしたりと作画のタッチは独特です。
でも、やはり作品の核は何と言っても物語の内容と展開です…
主人公である不動明の序盤は「翻弄された」という表現がピッタリ…
彼は自ら望んでデビルマンになった訳ではありませんでしたから…
相手を心底思いやれる心…相手の痛みを知る心…
その相手は人だけに留まりません。
そして何より、人のために泣ける心…
自分より相手を優先する心…
こんな眩しい心…身も心も人間で持ちえる人が一体どれくらい存在するのでしょうか…
苦しみたくない…楽をしたい…
人間であれば湧き上がっても全然おかしくない欲求だと思います。
でも、デビルマンの心はそんな目の前の欲望に屈するほどヤワじゃありません。
何度も何度も自分の心にしがみついて…更なる激しい欲望に何度も何度も耐え抜いて…
不動明がいかにヒトとしての心を捨てたくなかったかが画面から容易に推定されます。
だから中途半端な人間よりよっぽど眩しいんです…
でも、人は異質を排除したがる生き物でもあります。
きっと人間の臆病な側面…或いは危機回避的な側面が脊髄に「危ない」と警鐘を鳴らすのでしょう…
どんなに心が綺麗でも身体が悪魔なら…人間の尺度ではもう十分なくらい異質なんです。
「俺は人間だっ…!」
「俺は絶対に人間には危害を加えないっ…!」
どんなにボロボロになっても彼は叫び続けました…
彼の悲痛な叫びは届いたのでしょうか…?
少なくても彼を目の当たりにした人々には、しっかり届いたと思います。
それ故に9話のラストシーンの衝撃には言葉を失いました…
本質を見誤った人たちによる惨劇は誰もが望まない状況でしかなかったから…
あんな事をして…何が楽しいんだろう…何で笑えるのだろう…
9話の最後に残したデビルマンの一言が胸に刺さります…
大切なことに何時気付くことができるか…
我を通すだけでなく、周りの囁きに耳を傾けることができたら、こんな結末にはならなかったのに…
少なくても完走した人は目にしたと思います…
人間の心を持ったヒトとアクマは共存だってできるし、同じ目標を持って進むことだってできるし、感情が無いと言われたアクマの中にだって昂る熱い感情があることを…
だからこの作品で気になったのは結末の迎え方です。
本当にこの終わり方がベストだったのでしょうか…?
原作のラストはこうだったのかもしれない…
けれど、たくさんの血と涙を流して得た結果に改変の余地は無かったのでしょうか…?
それだけが唯一の心残りとなった作品になりました。
1クール10話の物語でした。
大人向けの作品なので、視聴には上述した痛みを伴うと思います。
それでも気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。