◇fumi◆ さんの感想・評価

4.3
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

時計の針が　止まった時間を塗り替えて　最後のかけらを取り戻して

2016年放送のテレビアニメ　全13話

原作　夜宵草　監督　小坂知　構成脚本　横手美智子/兵頭一歩　キャラデザ　山中純子
制作　トムス・エンタテインメント/だぶるいーぐる

原作者の夜宵草は女性漫画家で、この作品がメジャーデビュー作。
web連載ですが、相当のヒットを記録したようです。
17年には実写映画化もされ、それなりに有名作と言えるでしょう。

海崎新太　CV小野賢章　主人公
日代千鶴　CV茅野愛衣　ヒロイン

二人の主人公の物語のようですが、アニメ的には大きなネタバレが存在します。

主人公海崎新太は大学２浪で大学院卒業、27歳で就職と遅れたのですが、
会社内でトラブルに巻き込まれわずか３か月で退職となります。
再就職にも失敗し、ローソンでアルバイトと言うフリーター生活になっていた。
そのとき、リライフ研究所の職員を名乗る者に声をかけられ、
社会復帰の実験の被験者になるように誘われ説明を受ける。
ここから物語は始まります。

実験とは薬物によって高校生の外見となり、１年間だけ高校生活を送ると言うもの。
薬物のテクノロジーは超未来的ですが、気にしないほうが良いようです。
単なる潜入ものですね。
「乙女はお姉さまに恋してる」は女装潜入でしたが、これは若作り潜入。
その程度の認識でいいようです。

なぜ高校生活をやり直すことによって社会復帰可能なのかという疑問がありますが、
海崎はリライフの被験者No.002、つまり二人目と言うことで効果は不明の段階でしょう。

この作品においては、単に海崎が高校生活を送っているだけで、
問題提起に対する回答には至りませんでした。

絵の感じが素朴で慣れるととても落ち着きます。
劇伴はジャズ風ピアのソロが多く、盛り上がるとソプラノサックスが入ったりする程度で、
とてもシンプルです。
70年代コンテンポラリージャズ系ワールドミュージックの人です。
ウェザーリポートやメセニーグループやリターントゥフォーエヴァーなど、
平たく言うとフュージョンミュージックです。

この作品だけなら、あまりテーマなど考えずにやり直し高校生活を楽しむと言う、
まあ、つまり「エロゲ原作アニメ」と変わりないですね。

全体的に上品で落ち着いたムード、大人な登場人物が多く普通の物語です。
青春したり初恋したり悩んだり励まされたりの高校生たちに混ざって、
主人公は成長していく、という感じですが、どうも重要なことが描かれていないようです。

原作の約半分を描かないことでシンプルな作品になりましたが、
解決のためには残りの半分が重要なピースになりそうです。
続編に期待が強まります。構成作家の腕の見せ所ですね。

大人な登場人物と高校生のギャップでイライラする部分もありましたが、
全体としてはとても気持ちよく優しい気持ちになれる作品でした。

もうすぐ完結編OVAが発表されるようで、投げっぱなしではないことを期待します。

EDは12曲　曲名だけで分かる人は分かると思います。

１、イージーライダー　２、HOT LIMIT　３、タイミング　４、HONEY　５、これが私の生きる道　
６、Sunny Day Sunday　７、サウダージ　８、雪の華　９、愛のある場所
１０、明日への扉　１１、PIECES OF DREAM　１２、夏祭り

就職氷河期の時代にヒットしたJ-POPです。

ものすごく「NHKにようこそ」を思い出しました。
「パズルの欠けたピース」
この作品にこそ合う言葉です。

完結編発売で物語は上手く締まりました。必見作です。