蒼い✨️ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメ業界のプレバト。
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
2016年8月26日に公開された劇場版作品。
監督は新海誠。
【概要/あらすじ】
東京都千代田区で暮らす男子高校生、立花瀧。
岐阜県飛騨市の山奥にある田舎町の女子高生、宮水三葉。
彼と彼女は夢の中で知らない誰かになっていた。
妙にリアルな夢の中で過ごす他人の人生、慣れない男女の違いへの戸惑い。
記憶が曖昧な中で家族や友人から、『昨日のおまえ、おかしかったぞ』
と言われても身に覚えがない。
状況を整理していくうちに二人は認識した。
瀧と三葉は週に何度かお互いに中身が入れ替わっている。
入れ替わっている間に互いにメモを残すことで、連絡を取り合ったりルール作りをしようとするが、
デリカシーに関わる部分で噛み合わず、『人の身体で勝手なことをするな!』と喧嘩をする二人。
入れ替わり生活を繰り返すうちに、ようやく打ち解けて瀧と三葉の関係が変わり始めた矢先に、
ある日“入れ替わり”が途切れてしまう。
互いに何度も入れ替わるうちに、三葉が気になる存在になっていた瀧は、
彼女に会いに行こうと飛騨に向かうのだが、そこで思いもよらない事実を知るのだった。
【感想】
世界中で大ヒット上映されて、日本の映画史上にも残る記録的なアニメ映画。
熱心なフォロワーがいるもののマイナー寄りなポジションだった新海誠監督を一躍時の人にしてしまった。
売れてしまったことは自体は良い。
だが、メディア戦略上のキャッチフレーズに過ぎないのだが、
“新海誠・日本中がこの才能に恋をする。”とか同調圧力っぽくて恥ずかしいなあと思ってしまう。
今回、これまでの新海作品とは比較にならないほど売れてしまったのだが違いはなんだろうか?
モノローグだらけの新海節は健在ではあるものの、
『雲のむこう、約束の場所』
『秒速5センチメートル』
などであった“虚無感”“切なさ”に彩られた新海ポエムが薄れて、“コミカルさ”“ひたむきさ”
が強めに従来の新海ファンより間口を広げて一般層が好むライトさに作品の方向性が変貌している。
田中将賀が原案のキャラクターデザインが与える印象が大きいのだろう。
同氏の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』調ではあるし、
三葉の友人であるテッシーは、『心が叫びたがってるんだ。』で見たことのあるような既視感がある。
今の世代向けのアニメ要素を積極的に吸収して味付けしていったら、
従来の新海誠作品にあった、暗さや硬さが中和されていった感がある。
感情のあるキャラクターとして愛嬌を表現するにはキャラデザは重要なのだ。
序盤の入れ替わりコメディの日常パートにしっかりと尺を割いているのだが、それが作品にプラスに作用している。
アニメ映画というTVシリーズと比較すれば限られた尺の中で、登場人物に興味を持って感情移入してもらう工夫。
そこをおざなりにしてしまえば登場人物は物語の歯車に過ぎず、
作中で泣こうが叫ぼうが、『ふーん、それで?』で終わってしまう。
同監督の『雲のむこう、約束の場所』がセカイ系であり、日常パートが短くて薄味だったのと比較すると濃度が違う。
より多くの人間に楽しんでもらうには観客に解りやすく、じっくり丁寧に伝えるのは大事である。
ヒットメーカーであるプロデューサーなどのアドバイスも大きいのだろう。
それが新海監督をヒット作のテンプレにハメて個性を薄めてしまったのように批判的な人もネットにいるのだが。
実際のところ、ストーリーは矛盾や科学的におかしい部分が結構ある。
{netabare}二人の時間が三年ずれてるのにカレンダーで確認しない、隕石が落ちたら被害があの程度じゃ済まんだろうetc, {/netabare}
(オカルト的な部分は突っ込むこと自体に意味がないので除く)
シナリオ的には特に目新しい部分は無いと思う。
これまでの新海作品との違いは、基本的な構想は新海誠監督のものに違いないが、
監督固有の観点で作られてしまう、いつもの男性視点のナルシシズムが極力薄められていて、
普遍的なラブストーリー要素など幅広く大勢の人間の感情に訴えかけるモノが、
ふんだんに散りばめられていたからだろう。
それが元々高く評価されていた新海作品の美術センスにマッチしていて、
表情のあるキャラと絡まっていた。
人間は観たいものが観れたら称賛の声を浴びせる。
結局は新海監督個人の性癖がギャラリーが望むものと相反していて、
マニア向けになっていたのを今回は方針転換したという話である。
これを進化と見るか迎合と見なすかは個人の判断ではあるが、
迎合しただけでは大人気作品ぶりには説明がつかないので、
元々監督には非凡なセンスが在ったのに歯車が噛み合わなかったのを、
名プロデューサーが上手く矯正したというところか。
個人的な感想を書いてなかったので最後に!
シナリオに欠点を探せば色々あるのだろうけど、今までの新海作品が嘘のように感性に合う部分が多くて、
非常に楽しめたというのが本音。手放しに絶賛はしないのではあるが。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。