oneandonly さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
真実味を感じさせ、聞き入らせることの重要性を体感できる作品
世界観:6
ストーリー:7
リアリティ:9
キャラクター:8
情感:7
合計:37
八代目八雲に弟子入りして早十年、ひよっこだった与太郎もいよいよ真打に昇進。襲名するのは、八雲の兄弟子であり小夏の父親でもある「助六」の名だった。順風満帆のようにも見えるが、そうもいっていられない。落語はいまや時代に取り残されつつある。父親がいないまま母親となった小夏のことも心配だ。三代目助六となった与太郎は自らがたぐり寄せた縁をしょって立つことができるのか……?
(公式サイトより)
原作未読。1期が素晴らしかったので、そのままの勢いで視聴しました。
序盤は、{netabare}また組の人間が出てきて、その親分が小夏との子どもの父親という、{/netabare}あまり楽しくない展開だったこともあって、1期の熱があったにもかかわらず評価4.0からのスタートとなりました。
改めて、この作品の一番の見どころは、{netabare}8代目八雲(石田彰氏)の存在感・実在感だと思います。幼年から老年までの声、落語の噺ぶりが素晴らしいです。2代目助六、与太郎ももちろん良かったですが、最終的には八雲が個人的に一番好きでした。若い頃の噺は確かに話し方に面白味はないですが、老年期の落語は年を経た円熟さが感じられました。話が巧ければ良いというものではなく、噺に真実味を感じさせる、聞き入らせることのほうが大事だと感じさせてくれたと言い換えることができるかもしれません(アニメでも、話に没頭させるだけのリアリティのある作品を高評価したいと思うのですが、それとも共通ですね)。それに加え、幼年時からの苦難の人生、愛する人や親友(ライバル)との死別とその自責や苦悩、死ぬことができない執着が、その人間性に深みを与えています。
2期も、八雲が高座中にみよ吉の幽霊を見て倒れる5話あたりから、物語のテンポが良くなってきます。7話の2代目助六とみよ吉が死んだ経緯が塗り替えられたのも、八雲が小夏のために真実を背負った重荷を感じられましたね。刺したのも、後から事故だったとわかりますし、全体としてここでも真実味が増したように感じました。
八雲の死には、十分な伏線が張られましたし、最終2話で、あの世とこの世、両方でしっかり締め括ったのも良かったですね。八雲の存在感が大きくなりすぎて、現実世界よりもあの世のほうの世界を見ていたい気分でした。
キャラ面では、八雲の次点には松田さんかな。2期は、松田さんの存在感も大きくなりましたね。7話で四国に行くところでもあの当時を一緒に見ていた(視聴者は八雲の話を聞いた与太郎視点ではありますが、実際に見ていたくらい臨場感があったので)仲間という気がしましたし、八雲師匠を最後に見送る役目までされるとは。感情を抑えきれない話し方が涙を誘いました。
余談ですが、1期の時には気が付かなかったですが、私も祖谷を旅行で訪れたことがありました。車で行って、かずら橋という名所だけ立ち寄っただけでしたが、記憶ではそれほど離れていないところに有名な限界集落があるような徳島の山間で、東京からよく移動したものだと今更ながらに驚きました。
松田さんが最終話でまだ存命でそれはそれも良かったです。最初、三途の川で出てきたのは、八雲が一番落ち着ける存在として投影しただけかと思いきや、松田さんにも記憶があるようなので、寝ている間にその世界を見られたということでしょうか。老いると、霊の幻覚が見えるようになるものなのか、私にはわかりませんが、日本人の死生観からでしょうか、違和感はなかったです。
最終話で信之助の父親が、という話が出てきました。当初話半分で聞き流したのですが、信之助の成長した容姿や小夏の言葉、10話の寄り添う姿、あの世の寄席で信之助を呼んだことなど、そちらのほうが本当なのかと思えてきました。しかし、これまでの八雲と小夏の関係では想像できず、この点はリアリティ面と八雲の人間性に響く部分です。親分さんとの関係という話は元々違和感がありましたが、ここまで来て強すぎるスパイスをぶっこまれて処理しきれないです(とりあえず評価面ではマイナス作用で、お気に入り枠から陥落)。{/netabare}
見終えて、改めて全体的に人間が描けている良い作品でした。大人向けに寄っているとは思いますが、引き続き優良作の評価になります。
私は方言がない人間ですが、作品の影響で子どもに対する口調が少し下町言葉になってしまいました。結構話していて楽しいです(苦笑)
(参考評価推移:3話4.0→7話4.2→9話4.3→10話4.4→11話4.5→12話4.6→調整4.4)
(2018.3視聴、2019.1調整、若干文章を修正)