カンタダ さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
そつのない良作
ケチを付けるのが難しい良作。最後まで楽しませようという製作者側の気持ちが伝わってくるようだ。全体的に高い水準でまとまっていて、違和感もなく話に没入でき、一人ひとりの登場人物もしっかりと作られていて好感が持てる。
じつに手抜かりのない作品だが、それだけに突出したものも感じられないのは残念。もう一度見ようという気持ちにはならない。なぜなのか?おそらく、登場人物の悪い意味での安定感のせいではないか。
{netabare} コクウともう一人の主人公(こちらが真の主人公だろう)であるキースから妹を殺したであろうギルバートに対する憎しみが、”ほとんど”感じられない。かならず捕まえるという決意は感じられても、憎悪からの葛藤や暴走もなく、表面上では淡々と追いかけているようにしか映らないためではないか。
愛するものを奪われた者は、奪った相手に対してここまで正気を保てるだろうか?まったくの理性だけで動ける人間に対して共感することは難しい。キースは最後までギルバートの策から一歩も外に出なかったようだが、それに対して悔しさもないようで、まんまと策にはまって元友人を殺害したこと、つまり「理解できない」と言った殺人に対する悔恨も葛藤もないようだ。おまけにキースに抱いていた憎しみもさっぱり精算されているようで、妹の存在はまったく忘れられている。せめて墓前に報告くらい行ったらどうなのだろうか?
ほんとうに精神が安定している、いや、し過ぎている。ギルバートは殺人衝動に対して自己の中に別人格を作り出すことで精神の崩壊を防いでいたらしいが、キースもそうとう精神的に問題があるのではないかと疑いたくなる。殺人とは限られた枠で描ききるのは難しい問題なので、そこに時間を割けないのは仕方がないかもしれない。が、もうちょっと心遣いが欲しかったところだ。
それにしてもキースに対してコクウの存在が少々霞んでしまう。彼の背負ったものもそうとう陰鬱ものだが、幼稚なためにただ前に進む事しか知らないため彼の物語が浅薄に映ってしまう。若いのだからもっと悩めばおもしろかったろうが、迷いがないせいで話の中の戦闘パート担当者になってしまっているのが惜しい。{/netabare}
とりあえず、良作であることは間違いないのでおすすめしたい。