ワドルディ隊員 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
視聴者が漫画既読、OVA視聴済か否かによって感想が大きく変わる
このアニメはネットフリックスで配信されている
永井豪の漫画「デビルマン」を原作としたWebアニメである。
原作を忠実にそのまま再現したというよりは、現代風に
アレンジを加えた平成のデビルマンと考えた方がいいだろう。
私自身は、以前に漫画を読んだことがあり、
OVA3作品全てを視聴済みの人間だ。
漫画既読者、OVA視聴済みの方ならすぐに気づくだろうが
結構変更点が多い。OVA版とクライベイビーを通じ、私が
特に気になった部分のみ抜粋する。(ネタバレあり)
{netabare}
OVA版
ヤクザな風貌を覗かせる不良少年が登場。
飛鳥了にデーモンの存在を教えたのは飛鳥の父親。
ジンメンは純粋(悪い意味で)なデーモンとして描かれている。
ゲルマーは、シレーヌの部下という立ち位置。
シレーヌとカイムは最初から最後までデーモンの姿のまま活躍する。
太郎は最後まで人間として描かれている。
クライベイビー版
非常に癖のあるラッパーが登場。
飛鳥了にデーモンの存在を教えたのはフィキラ教授。
ジンメンは人間の意識が介入している半デビルマンとして描かれている。
ゲルマーは、シレーヌとはあまり関連性がないデーモンという立ち位置。
シレーヌとカイムは人間の姿で身を潜めながら、人間を恐怖に陥れる
デーモンとして活躍する。
太郎は最後にデーモンへ変貌する。
{/netabare}
良いなと感じたところは、現代でよく見かける道具
スマートフォンやパソコン、SNS等を上手く絡めていた部分。
試合中継を利用して、デーモンの知名度を高めようと
裏で工作するシーンはとても良かったように思う。
一部のオリジナルキャラクターもいい味を出していた。
特に好きな人物は幸田と長崎。
幸田は、明のようなデビルマンとは対照的な存在として描かれている。
終盤における、明とのやりとりでそれがよく分かる。
違った側面を持つデビルマンとしても印象的な人物だった。
長崎は、作中の中では影が薄く出番も少ないが、引き立て役としての
役目はきちんと果たしている。少しばかし小物臭はするが
モブキャラの中では特に気に入っている。
太郎のラストは、作中の中でも特に良いと感じた場面だ。
まさか、人間ではなくデーモンとして描かれるとは
思わなかった。途中、目ヤニ(?)らしきものがついていたので
もしやと思ったが。実は、漫画版における牧村家はクリスチャン
ではないのだが、クライベイビーではクリスチャン一家という立ち位置だ。
なぜわざわざ変えたのか疑問に思ったのだが、ここを描きたかったのが
一番の理由だろう。大いに納得した。
気になるシーンもいくつか見受けられた。
ラッパーを登場させることで、漫画との差別化を図りたいという意思は
凄く伝わるのだが裏目に出ている場面も多く見受けられた。
特にくどいと感じたのは、ミーコに一人のラッパーが告白をするシーン。
誠に申し訳ないが、私には興ざめだった。
終盤で演出のくどいシーンがあった。確かバトンを渡す場面だったような。
1回だけならまだしも、3回はさすがに出しすぎである。
ラストのシーンは良かっただけに、途中変に気分が萎えてしまった。
他の部分に尺を使用すべき。
海外向けに発信したいということもあり、飛鳥了が必然的に
英語を駆使する場面が多かったのだが、そこまでする必要はないと感じた。
漫画のように、無理をせずに日本の学者をそのまま登場させれば
違和感を感じることなくすんなり理解できたのに…。まあ仕方なかろう。
それにしても、飛鳥了が序盤から明らかに怪しい人物だと示唆する
場面が多すぎるような気がする。特に、序盤のサバトが行われた時に
発する台詞の一部は入れる必要はないように感じる。
勘がいい漫画未読者ならすぐに気づいてしまう。
ゼノンが、人間達に恐怖を常に煽るようなデーモンに見えなかった。
確か漫画では、サタンと会話する場面がありデーモンの中でも
トップクラスに位の高いデーモンだと分かるのが、そこも省いたようだ。
終盤に関しては、「どうも~ゼノンで~す」みたいな軽いノリで
明と戦闘し、そのままご臨終。う~ん。あまりにも味気ない退場だ。
もっと出番を増やしてあげて欲しかった。可哀そう。
デーモン関連で一番残念だったのは、ジンメンだ。
あのデーモンだけは、変に改変するべきではなかった。
なぜ、余りにも中途半端な半デビルマンとして登場させたのか。
人間を介入させるのならば、明と出会う前には既に人間の意識を奪うほどの
精神的な強さも描く場面を挿入すべきだ。ジンメンの
残忍さが損なわれている。あれでは、只の半端者だ。
当然、ジンメンの有名な台詞を聴くこともできずそのまま退場。無念。
素晴らしいと思える場面も多かったのだが、気になる点もいくつか
見受けられたのでこのような評価になった。
対象を、漫画既読者ではなく漫画未読者として制作したのが
一番の狙いだったのだろう。漫画未読者であれば驚く場面が
多々あるため、楽しめるはずだ。OVA版ほどではないが
グロテスクな描写もあったり、エロティックな場面も挿入されているため
ある程度耐性を付けた上での視聴をお勧めする。
個人的には良作だと思う。