oneandonly さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
少しばかり、言葉に関心を持てるようになる作品
世界観:5
ストーリー:6
リアリティ:7
キャラクター:6
情感:6
合計:30
口下手なのに営業部員の馬締光也と、一見チャラ男だが辞書編集部員である西岡正志は、偶然、街中で出会う。
中型国語辞典『大渡海』の刊行計画が進む、出版社・玄武書房のベテラン編集者・荒木は、自身の定年を間近に控えて後継者を探しに躍起になっていた。そんな中、西岡から馬締の話を聞き、彼をスカウトすることに。
「人をつなぐ言葉を編む」
伝わらない言葉。伝えられない想い。
これは、そんな不器用な人間達の物語である。
(公式サイトより)
現シーズン(2018冬)において、宇宙よりも遠い場所及びゆるキャンを視聴しているのですが、女の子濃度の高さに息苦しさを覚えたので、男が主人公の大人向けアニメを探していたところ本作を見つけたという次第です。
序盤は{netabare}盛り上がりがなく(ストーリーありきの主人公(馬締)のキャラクターや展開)、少々退屈しました。馬締が同居人の香具矢に恋をするエピソードも、恋文のくだりはあったものの、いつの間にか結婚しているし、重点は置かれていません。(原作では「恋」の語釈を馬締が行うという辞書との繋がりもあるようですが)
主人公の勤める玄武書房における辞書編纂部の存在もリアリティがあるのかないのか。まだ序盤だったと思いますが、社内で辞書「大渡海」の出版中止の噂を聞いた西岡が既成事実を作ってしまうという話。会社の方針に真っ向から抵抗するのも驚きですが(一応、宣伝部への異動という形で責任を取らされましたが)、噂されるほどの時点で、会社の方針が出版中止なのであれば、辞書編纂部の上役に事前に根回しがあってしかるべきです。この噂話を西岡が部内でした時に、松本先生か荒木さんが神妙な顔になって「実はそういうことになったんだ」と言うのかと思ったら、「そのアイディアいいですね」とか。
辞書編纂には金がかかるとも言っていたように思いますが、コストのかかる部署である辞書編纂「部」の部長が出てこないのはおかしいと思ってしまいました。しかるべき立場の者がしかるべき者(役員や会議体)に掛け合うのが筋です。
いつの間にか結婚していて驚いた話をしましたが、下宿のおばあさんも亡くなっていましたね。辞書の編纂は時間がかかるということがわかります。
血潮の言葉を見て、「手のひらを太陽に」の鼻歌を歌うシーンに共感。しかし、そこでまさかの抜けが見つかり、24万語の全件チェックを行うことになります。言葉で言うのは容易いですが、実際には壮絶な数ですね。チェックの前に作る作業があったということになりますが、24万を365で割って657.5。1日66語で10年かかる計算です。実際には3人くらいの体制だったので、1人あたり1日22語、休日を加味すると30語くらいですかね。
でも、こういうのって、好きな人は好きでできちゃうんだろうなとも思います。実際、作中にも登場した「言海」は大槻文彦の独力で自費出版されていますし、近年では、「新解さんの謎」で有名となった「新明解国語辞典」(「恋愛」や「動物園」などの語釈や用例が話題に)も少人数で編纂されているようです。
あと、印象に残ったのは、西岡が土下座を拒否するシーン。彼はパッと見、チャラい男に見えますが、芯を持ったキャラクターとして辞書編纂部を支えていますね。良い味を出していたと思います。
馬締絡みでは、辞書の紙質にこだわるシーン。言われて、そういえば辞書はそういう「ぬめり」のある紙質でできていることに気付いたり。この世界も、今後は電子化の流れに逆らえないのでしょうけれど。{/netabare}
序盤、ややテンポが悪いところもありましたが、私たちのコミュニケーションに欠かせない言葉の意味をとりまとめる作業がどんなものかを知ることができました。「右」の定義など、普段には考えない頭を使わされますし、語彙が増えたり、正しい言葉使いができるようになりそうですね。
(参考評価推移:3話3.4→6話3.5→7話3.7→8~11話3.8→調整3.7)
(2018.2視聴)