M.out さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
止まらない岡田麿里
「あの花」も「ここさけ」も合わなかった私だが本作は楽しめた。岡田麿里の脚本は、話運びとかキャラの心情的な部分ではなく、感性としてが合わないところがある。本作にもそれはあった。
岡田麿里は人間の美しい部分と醜い部分の両方を描き、それ故「気持ち悪い」脚本家だと思っている。とんでもなく感覚が研ぎ澄まされていて、表現技法がすごく、故になんだかドロドロして気持ち悪い。しかし、とてもよい。(今までの私が合わなかったのは、そういう良い気持ち悪さではなく、気持ち悪い気持ち悪さがあったからなのだが)
ファンタジーを離れて久しいからなのだが、ファンタジーの持つワクワク感のようなものを久々に味わった。作りこまれた設定と、その美術の美しさは文句の付け所がない。
話自体は割とありがちな話であり、端的に表現するなら「人の生き死に、出会いとさよならが最終的に悲しみしか残さないのなら、ひとりぼっちでいい」みたいな話である。冒頭でこれらしきことを長老が言って、その後に子ども拾った時点で、ポスターの感じとかから結末を予想することは簡単なのだけど、それまでの過程に目を見張るものがある。
{netabare}
長い命の種族、マキアは赤子のエリアルを拾って子育てを始める。しかし、いつの間にかエリアルだけが年をとっていく。エリアルの成長に伴って、マキアとエリアルの関係は変化していく。
その関係に宿っている愛は悲劇をもたらすかもしれない。今後来るであろう別れに、マキアは悲しみを感じるかもしれない。
それでも母という姿勢を貫く。命が巡る世の流れの中にある「愛する」という人の営みの美しさが、滲み出てくる。すばらしい。すばらしい。
最後の回想入れたりするくだりが涙をせき止めかけたけれど、タンポポの綿毛が命の移ろいを表現しながら祝福するように飛び立っていくのを見たら、もうダメだった。
{/netabare}