Progress さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
世界は色に溢れている
Sec.1[イントロダクション]
春の雨の匂いとはどんな匂いだろう、少し穏やかで、新緑の香りだろうか。
灰色の世界の、アスファルトに落ちていく雨。
彼等は熱を失い続けていた。
そんな中で、彼女と彼女の猫が出会う。
Sec.2[彼女の日常]
何気ない人の営みの中に、薄く塗られた水彩の色のように、
少しずつ熱を感じ始める。
彼女の薄い香水の匂いを好きだという猫の、近くにいながら伝えない密かな思い。
「重い」ドアを開けるときですら、そこに静けさと、彼女のかすかな匂いと生活の熱が感じられる。
Sec.3[彼の日常]
雨の匂いを残した、青々とした空の夏の日々に、彼女の猫は、
大人の女性が好きなんだと、少し背伸びをする、少し熱っぽい。
無邪気さのある振る舞いが、子供っぽい。
「ホントにきてね」と続けていうミミの、彼女の猫への思いが、
強さと、遠く届かない切なさの感情が、行き場のない熱を帯びている。
Sec.4[彼女の寂しさ]
「少し涼しくなった」そんな時期に
長い電話の後、泣いた彼女の心と彼女の猫の心から、急速に熱が失われていく。
長雨のような、彼女の泣く姿と、かすかな叫びに搾り出した熱を残して、静寂がやって来る。
彼女の猫には入り込めない彼女の寂しさ、交わらない熱。
Sec.5[彼女と彼女の猫]
冬の匂いを感じ始め、静寂が雪が降るような朝に、また彼女が家を出る。
同じ日常の風景のはずなのに、春に感じた熱とはまた違う、
少し温度を下げたような彼女の日常の熱。
世界は全て雪に覆いつくされ、静寂に包まれている。柔らかな雪が世界の熱を隠している。
彼女と彼女の猫の猫だけが確かな熱を帯びて、確かな存在を感じる。
この世界は時として、私達の熱を奪っていく。それでも、日常が帯びる熱も、彼女が帯びる熱だけを感じれるこの世界も、好きなんだと思う。
感想後記
「熱」「匂い」「日常」というキーワードが気になったのでその辺を中心に見て書いてみました。本当は「熱」=「色」と考えて、モノクロの世界で色が失われている状態から始まり、出会いから、日常に色が帯び始めていくようにも感じました。状況の差により、色、熱といった日常の物の物質感の差を感じたので、そのへんがとても美しいなと思いました。