雀犬 さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
5分間のラブレター
【作品紹介】
『彼女と彼女の猫』は、新海監督がゲーム会社勤務時代の1999年に作った自主制作アニメーションです。
一人暮らしの女性に拾われた猫の視点から彼女の日常生活をモノトーンを描く5分弱の作品。
第12回DoGA CGアニメコンテスト、SKIPクリエイティブヒューマン大賞でグランプリ受賞。
現在は監督のHP「Oher Voice -遠い声-」で無料公開されています。
【感想】
わずか5分弱のショートアニメでありながら、新海監督らしさが十分に感じられるムービーです。
アニメというよりも映像詩といった方が良いかもしれません。
新海監督は一貫して男女の距離をテーマにした作品を作っています。
彼はあらゆる舞台装置を使って、画面に男女の距離間を映し出します。
過去作品を振り返ると、
「ほしのこえ」は宇宙という空間的な距離が最後には時間的な距離を生み出す物語です。
「秒速5センチメートル」もまた、距離と時間が二人を隔てていく物語であり、
「言の葉の庭」では年齢差で男女のすれ違いを演出しています。
そしてこの「彼女と彼女の猫」も例外ではありません。
猫には彼女が電話で誰と話しているのか分からないし、落ち込んでいる理由も分かりません。
逆に彼女は言葉が通じないからこそ、心を癒してくれる存在として仔猫を拾い愛でている。
猫と彼女の関係性は完全に一方通行なものです。
にもかかわらずアニメの中で、猫は「彼女が好きだ」とはっきり私たちに告げます。
そう、これはネコとニンゲンという種族の違いが決して埋まらない空白を作る男女の物語なのです。
何人かのレビュアーさんが指摘している通り、猫のチョビは人間の男性とそのまま置き換えられます。
本作は牡猫と女性の恋愛を描いているようで、実際には人と人の恋愛を描いています。
猫の顔がやや極端にデフォルメされていることと、彼女の顔が映し出されないことには意味があり、
キャラクターの匿名性により観客は<猫>と<彼女>に
自身の記憶の中の男女の姿をはめ込むことが容易になるのです。
さて、このアニメ「彼女と彼女の猫」は
新海さんが当時付き合っていた彼女のために作った作品であることをご存知でしょうか。
レビュータイトルの通り、「5分間のラブレター」とでも言いましょうか。
付き合っていたとしてもお互いのことを何でも知っているわけではない。
このアニメの猫と彼女みたいに、逢わない時は知らない世界があり、
それぞれの事情があり、同じ場所にいてもお互い違う風景を見ているのかもしれない。
男女の心の距離は曖昧で、近づいたり離れたり、不安な気持ちにさせる。
「飼われている」というシチュエーションは「捨てられる」という危うさを抱えています。
それでも、いやだからこそ気持ちが通じ合えたように思える瞬間に、
平坦でモノトーンの日常が鮮やかな色彩に包まれるように感じ、
僕はこの世界そのものを好きになってしまう。
後の作品、秒速5センチメートルで貴樹が「13年間生きてきたこと全てを分かちあえたように思えた」と語り
言の葉の庭でタカオが「今まで生きてきて今が一番幸せかもしれない」と語った感情です。
"この世界が好き"という台詞が重なり合うのは、<君が><あなた>が好きだと思える瞬間なのだと。
これが新海流の"I Love You."なのです。
あああああああああああああ甘い!甘すぎる!
まるでスニッカーズのように甘い!
世界よ爆発しろ!!
すいません少し興奮して声がデカくなりました。
まぁ、そういうことなんですよ!
※点数は付けにくいのでデフォルトのままにします。