さかまがはら さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
語らせてくれ
このアニメは自分にとってとても特別なものです。長くなるしネタバレもありますがが勘弁してください。
アニメを見始めるきっかけをくれたのがこの作品です。プロフィールにも書いてますが、私はこの君嘘の実写化を見るために比較用にアニメを見ることにしました。しかし見始めてビックリしました。あまりにも心を掴まれたからです。
元天才ピアニストの主人公、有馬公生が、現役女子高生バイオリニスト、宮園かをりとの出会いをきっかけに、ピアノや自分の過去とまた向き合っていく物語です。
まずアニメの絵ってこんな綺麗なんだって思いました。初めての深夜アニメの私にとって、君嘘の絵はとても美しく、どこか儚さがただよう、幻想的なものに見えました。特に演奏のシーンは臨場感が半端なくて、自分も会場にいるかのように固唾を呑んで見ていました。
物語が進んでいくうちに、かをりが何か重い病気を患っていることが分かります。それなのにかをりは、公正やみんなの前ではとても明るく、音楽に真っ直ぐで、無邪気な姿を見せるんです。公正と2人で楽しそうなことしてるシーン全てで、この時間が決して長く続くものではないんじゃないかと思うと、胸が張り裂けそうになりました。
かをりのおかけで、公正は自分に呪いのようにまとわりつく過去、要は母親への思いに決着をつけることができます。その公正を見て、幼なじみの椿も自分の公正に対する思いに向き合っていく様になります。さらに公正の復活によりかつてのライバルピアニスト達も動き出していきます。かをりを起点としていろんな人が動き出していくんです。それなのに、かをりはどんどん弱っていきます。
かをりがもう病院から出られない状態になって、公正は一人でコンクールに挑みます。公正はかをりの思いを背負って、かをりに届くように演奏するんです。最後の演奏シーンほど胸を熱くするものはないでしょう。かをりが現れて一緒に演奏しているようで、それは彼女が公正に別れを告げるものなんです。でも初見の時、私はかをりがどうなってしまうか半分予想はついていたものの、それでもまた公正と一緒に演奏できる時が来ると信じていたんです。
しかし、かをりは亡くなっていました。とんでもない喪失感でした。それを知った時、感動とかそういう感情も、何もわいてきませんでした。でもかをりの手紙を読むシーンになって、自然と涙がこぼれてきました。
手紙で『嘘』の意味がわかりました。そして『君が好きです』の文字が目に飛び込んできた時、私は滝のように涙を流しました。だってかわいそうじゃないですか。彼女はそれを伝える前に去ってしまったんです。もうその気持ちを公正と分かち合うことも叶わないんです。切なすぎます。
でも彼女は既に報われていたと思います。ちっちゃい頃に憧れた人と音楽をして、一緒に無茶して、川に飛び込んで、笑いあって…。それだけで彼女には充分すぎたのかもしれません。病院から抜け出して、嘘をついた意味があったのかもしれません。彼女は公正の心に住みついて、公正の心を、ついでに僕の心も(蛇足)カラフルにしていったんですから。
君嘘を見ていて、音楽と、1人の女の子を通じていろんな感情が胸にこみ上げてきました。その感情をうまく表現しようとしても言葉に出来ない自分の語彙力が情けないです。でも君嘘ほど、熱く、美しく、切ない青春を見せてくれる作品はないでしょう。
このアニメのおかげで、それから素晴らしいアニメをたくさん見ることが出来ました。そしてこれからもそれは続いていきます。このアニメに出会えたことに本当に感謝です。