たわし(爆豪) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
運命は「抗うもの」なのか「受け入れるもの」なのか
SFの世界ではよく「ループ」や「歴史改変」、「多元宇宙論」などの様々な語彙をよく耳にする。それはかつて巨匠と呼ばれたSF作家が果敢に挑んできた命題であり、「もし今とは違う次元や世界があったとしたら世界はどのようになってしまうのか?」という「IF~」から始まる発想である。
簡単に言ってしまえばどらえもんのひみつ道具「もしもボックス」が作り出す世界であり、「もし女性だけの世界があったら。。」「もし日本が戦争に勝ってアメリカが負けていたら。。」「もし魔法がこの世に存在したら。。」世界は?歴史は?われわれの生活は?一体どうなってしまうのだろうか?
そういったことを真面目に考え、理屈を付け単に魔法少女ものアニメにまとまらず、思考を突き詰めたのが「魔法少女まどかマギカ」だったと思う。
前述した「多元宇宙」を題材にした映像作品は意外に多く「惑星ソラリス」、「スローターハウス5」などの古典から、「ウォッチメン」「バックトゥーザフューチャー」「バタフライエフェクト」「ミッション8ミニッツ」「メッセージ」などの近作、アニメやゲームだと代表的な「シュタインズ・ゲート」「AIR」「極限脱出シリーズ」などが該当する。(ほかにもごまんと存在する)
そこでよく議題に上がるのが、もし人間に「宿命」だとか「運命」などがあったとしたらその人は「受け入れるべき」なのかそれとも「抗うべき」ものなのかに焦点が当てられる。
あらかじめ決まっている(あるいは決まっていた)ことに対し、「反抗」するのか「従順」でいるのかといっても良い。
北米では自立の機会や独立自由の精神から、よく「反抗」する作品が多いと思われがちだが、「ウォッチメン」や「メッセージ」では逆手に「未来が予測できたりある揺るがない事実があったとしたら、それを受け入れることで、主人公なり読み手の人間的な絆や成長を深める」という主張をしているものもある。
さてこの「劇場版 新編まどかマギカ反逆の物語」では、TVシリーズで鹿目まどかは「宿命」を「受け入れる」ことによって人間的な成長とともに世界を救い永遠の存在(icon)へと昇華したが、その「宿命」を暁美ほむらのあくまで個人的な「愛」という名のエゴによって否定し「反逆」した結果、全く新たな戦いへと世界は変貌してしまった。
「たとへこの身が引き裂かれ朽ち果てたとしても、天国において奴隷たるよりは、地獄の支配者たる方がどれほどよいことか」
といったのは戯曲家ミルトンの「失楽園」における堕天使ルシファーことサタンのセリフなのだが。。。
人々の安寧のために自らを奴隷化し身を捧げた「まどか」と、地獄に落ちようが不幸になろうが、あくまで個人的な感情によりそれを退けた「ほむら」との対比が、現在における人々の葛藤そのものに僕には見える。