disaruto さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
色づく世界に、影はないけれど
【概要】
A-1 Pictures制作、全22話。
“元”天才ピアノ少年・有馬公生と、破天荒ヴァイオリニスト・宮園かをり。
二人の出会いと行く末、そして公生の復活を、情感豊かに描いた作品。
【感想】
音楽を題材にした、ほろ苦い青春群像劇。
恋愛メインかと思ったが意外とそんなことはなく、少年漫画色が強い。
色濃く描かれるのは公生の“トラウマ”であり、それをどう乗り越えていくか。
主要キャラたちが彼にどう影響を与え、どう影響を受けたかを見るのがポイントだろう。
劇中のセリフを借りると「人の世界は狭くて、一人ぼっちになることを許さない」。
ライバル二人の存在感も大きく、作品の方向性を決めた良キャラであった。
「お涙頂戴系」に分類される(と思われる)本作品。
確かにそうだが、涙の方向性が明るい方にも向いていたのが良い。
{netabare}母親である早希の真意に気づいたシーン、椿が自分の気持ちに気づいたシーンは今作のハイライトだと思っている。{/netabare}
伏線の張り方も結構上手くて、二度見ても楽しめる作りになっている。
実は私、視聴前からラストを知っていた(ネタバレ食らった)ので、そういう意味でも楽しめた。
色鮮やかな色彩や、派手な演出が印象的。
ピアノが弾けなくなる恐怖や、ふとした言葉で世界が広がる感覚など、上手く表現されている。
主人公がネガティブかつ、トラウマ・葛藤の描写が多いので、展開は結構重い。
だが視聴後の感覚としては、温かさが残っている。
作中では1年間を描いているが、季節感の表現が上手かったのもプラスに働いている。
こういう青春群像劇だったら、また見たいなと思える良作だった。
【不満】
モノローグがしつこいです。
心情描写を深くやろうという気概は感じますが、ちょっとやり過ぎ。
なんともポエミーで婉曲的な感じが、ストレートに感動させてくれない場面も。
派手な演出で、モノローグの長さを誤魔化してはいましたけどね。
あと、音楽の上手さを“言葉”で説明するのは難しいと思います。
行間を読ませることや、表情の描き方一つで、もうちょっと見やすくなるかなと。
演奏シーンや回想シーンが長すぎて、ちょっと飽きる話もありました。
でも、最終話の演奏シーンが圧巻だったのは言うまでもない。
【考察】
{netabare}・“呪い”の手紙
{netabare}呪いって言葉、不思議ですよね。
読み方で意味が180度変わります。
本作はワンフレーズごとに力強さがあると思います。
まさに公生の生き方を指し示すように描かれている。
例えば、公生が罵倒されるシーン。
「ヒューマンメトロノーム」「母親の操り人形」「譜面のしもべ」とか。
こんなパワーフレーズ、どうやったら出てくるのだろうw
しかもめっちゃ繰り返されるから、印象に残るんですよねえ。
例えば、公生のトラウマスイッチを入れてしまった一言。
「お前なんか死んじゃえばいいのに!」
この言葉の後、母親はすぐに他界し、罰として音が聞こえなくなるわけです。
加えてこれは、公生の自立を示す言葉とも表現されていますね。
例えば、かをりが公生に言い放った言葉。
「君はどうせ君だよ。」
「君の人生で、ありったけの君で、真摯に弾けばいいんだよ。」
「私の中に君がいるよ、有馬公正君。」
彼を舞台に上がらせるための言葉たちです。
そして最終話の“手紙”。
回想シーンも相まって、本作の集大成みたいな感じになっています。
これ結構評価分かれているみたいで「呪いの手紙だろw」っていう意見が見られる。
この手紙って、後押しを感じる内容だと思うんだけどね。
最後“例の新海作品”とは真逆を行く椿の登場とか、それを強めている気がする。
「人が死ぬのは、誰からも忘れられたとき」っていうのはよく言う話。
この手紙を彼女のエゴだと捉えるのは、ちょっとどうだろう?w
彼女の愚直な性格もあって黙ってはいられなかったのだと、好意的に解釈してみる。
これは彼女からの“呪い(まじない)”なんだと思います。
公生のこれからを占い、夢想し、背中を押す、言祝ぎなのだと。
だから視聴後の感想は、哀しいけれども温かいものになったのかなと思います。
呪いの手紙とか書かれていたから、無理矢理こじつけてみましたw{/netabare}
・作品構成の巧さ
{netabare}本作を語る上で欠かせないのが、有馬早希と宮園かをりの対比でしょう。
同じように弱っていき、病気で他界していく二人。
流れもほぼ一緒で、ともすれば公生は、また挫折してしまいそうな展開。
でも彼は挫折しなかった。
それはなぜか?
端的に回答すれば「母親からの罰の真意を知り、世界がカラフルになったから」でしょう。
世界が色づいて、周りの世界が見えるようになった。
閉ざされた世界が開いて、心の声を表現できるようになった。
自分のまわりに、どれだけ自分を支える要素があったかに気付いた。
それを気付かせてくれたのは紛れもなく、自分を舞台に引っ張り出した宮園かをりだった。
それを気付かせる流れがとても秀逸だったと思います。
最終盤で彼が復活し、素晴らしい演奏を披露できたことに強い説得力を持たせています。
そりゃあ、かをりのこと好きになるわなw
最終回の演奏で、かをりの死を悟ったような表情も良かったよね。。。{/netabare}
・伏線あれこれ
{netabare}結構伏線の張り方が上手い作品ですよね~。
作品のタイトル回収とか。
「渡じゃなくて、公生が好きだった」
読めそうなものだったけど、ぴゅあぴゅあな私は読み切れなかったよw
思わず、はっとしちゃったw
思い返せば、待ち伏せのシーンとか違和感あったわ。
かをりの病気関係だと、伴走者を頼むシーンかな?
「私を支えてください!」って頼むシーンあったよね。
あれ、涙ボロボロ流すんですよ。
えらい不自然だなって思ったんですけど、よく考えれば分かることだった。
だって、一緒に弾きたいからヴァイオリンに楽器を変えた子だもん。
しかも死期を悟っていて、最後のチャンスなんだもん。
そりゃボロボロ泣くわ。
幼少期の容姿が違い過ぎて気付かなかったけど、ちゃんと画面にも映っていたんだよね。
あと本作のdisりポイントである、凪の登場。
明らかにカンフル剤的な投入で、妹いることをほのめかしてほしかったよねえ~。
公生が影響を与えたことを実感させるキャラとして優秀だけど、どうもぽっと出感が強い。
そこはちょっと不満です。{/netabare}{/netabare}
【蛇足】
{netabare}お察しの通り、話したいのは瀬戸小春ちゃん(ピアノの先生の娘)ですよw
点目のくせに、クッソかわいいとか反則ですわ。。。
父性をくすぐられるんじゃあ^~
りんごあめを一緒に舐めてあげたい。
あの子が好きなやつはロリコンですよ、絶対。
私が言うのだから間違いない。
本作のレビューはポエミーかつ、超長文になっちまったね。
誰も全部は読まないと思うけど、ちょっと反省しているw
それだけ感動したんだよ、ぴゅあぴゅあなんだよ。。。{/netabare}