Tnguc さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
【お気に入り】 ポップミュージック化した新海誠監督のダイアモンドディスク級のヒット作
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田舎で暮らす少女・三葉(みつは)と、東京で暮らす少年・瀧(たき)の中身が眠りを介して入れ替わってしまう話。
まず、やはりと言うべきか、とくに目を見張ったのが新海誠(しんかい・まこと)監督が創り出す美術背景の美しさでした。日照時間が短く、電車は2時間に1本だけで、歯医者も本屋もないようなド田舎が舞台だけど、新海誠にかかればたちまち耽美的な世界に早変わり。どのカットも息を呑むほどに美しく、特に彗星が絡むシーンは新海誠にしかできない輝きを放っていました。もうこれだけで視聴する価値は十二分にあると思います。
物語は少年少女の中身が入れ替わるところから始まります。性別が入れ替わると色々と困る部分があるかと想像できますが、そういうところをコメディーテイストで描いていたのがすごく面白かったです。あと、住んでいる環境が入れ替わるアイデアもとても良かったです。三葉が東京の街を見て心奪われるシーン、とても共感しました。新海誠の美しい美術背景だからこそ実現できた演出だったと思います。入れ替わりのドタバタパートでひとしきり場が温まった後に流れたRADWIMPSの「前前前世」のタイミングも最適で、かなり盛り上がります。この辺りで、アニメを観ない層も巻き込んで大ヒットした理由が分かったような気がしました。
後半はよりSF要素を絡めたストーリー展開になりますが、この辺から無理が生じてきます。まず時間のロジックの甘さ、あと入れ替わりの設定が明確化されなかった点などは勿体ないと思いました。入れ替わりについては夢や眠りなどを境界としていたので、意外にも違和感なく受け入れられましたが、その他の要素は矛盾が表面化していました。記憶や日記を都合よく操作しすぎている印象で、SF設定を物語の都合に合わせすぎていた気がします。ただ、プロットがスムーズだったので、普通に観ている分にはあまり気にはならないかと思います。
これまではアンダーグラウンドな作風で人気を得ていた新海誠監督が、ここに来て商業ベースな作品を制作したことでコアなファンからは反感を買ってしまった感じですが、こういう流れを観ていると、かつて、メタルバンドのメタリカが、「ブラック・アルバム(メタリカ)」というアルバムを出したときに、従来のスラッシュメタルを捨ててキャッチーなメタルに鞍替えしたことでファンから叩かれていたときのことを思い出しました。皮肉にもブラック・アルバムはメタリカの一番のヒット作になったのですが、なにかそういう背景がこの作品と似ている気がしました。つまり、「君の名は。」は音楽で言うところのポップミュージックなんだと思います。「俺はファンクやプログレしか聴かねぇ!ポップなんてガキ臭い音楽聴けるか!」みたいな人にとっては少し退屈な作品なのかも知れません。
勘違いしてはならないのが、「人気や売上があるからといってそれが作品としてのレベルが高い」とは限らないということです。ワンピースよりも凄い漫画は腐るほどあるし、ハンバーガーよりも美味しい食べ物だってあります。ちょっとニュアンスが違うかも知れませんが、選挙に勝つためにはB層を意識した方が良い、という法則も同じ流れだと思います。
少し話が脱線してしまいましたが、私は凄い好きですよ、この作品。なぜなら、私はポップミュージックが好きだからです。
物語:★★★☆☆
・SF要素が甘く、ラストは少し置いてけぼり。それでもボーイ・ミーツ・ガールは胸がドキドキしますね。
作画:★★★★★
・美術背景だけではなく、有名アニメーター(安藤雅司や沖浦啓之)までも手に入れた新海誠作品は最強の一言。ところどころ宮崎駿や細田守作品を意識したビジュアルがありました。
声優:★★★☆☆
・俳優を起用しているが、わりと聞きとり易い方だと思う。
音楽:★★★☆☆
・RADのポップな音楽はそれまでの新海誠作品と雰囲気が違う印象ですが、作品のマーケティング的には適切だと思います。欲を言えば天門が参加してほしかった…。
人物:★★★☆☆
・恋愛要素を不完全なSFを通して発展させていたので共感は難しかった。そもそもお互いを意識する描写が足りなかったと思う。
個人的評価:★★★★☆(4.5点)