ピピン林檎 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
姫様(プリンセス)ご本人(プリンシパル)の決意と行動
作品タイトルがちょっと難しいんだな、本作は。
お姫様(princess)が関係するお話らしいことはすぐに分かるんだけど、プリンシパル(principal)って何?
・・・・ということで調べてみました。
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研究社 新英和中辞典での「principal」の意味
●形容詞限定用法の形容詞(比較なし)
1 主な,主要な; 第一の,先頭に立つ the principal rivers of the world 世界の主だった河川
2 【商業】 元金の
3 【文法】 主要な a principal clause 主節
●名詞
1 可算名詞 [しばしば P[N16-A12A]]
a (学校・大学などの)校長; 学長
b 長官,社長
2 [単数形で] 【商業】 元金; 基本財産 principal and interest 元金と利子, 元利
3 可算名詞 [しばしば複数形で] (演劇・オペラの)主役,出演者; (オーケストラの)第一奏者; 独演[奏]者
4 可算名詞 【法律, 法学】
a [しばしば複数形で] (代理人 (agent) に対して)本人
b (従犯 (accessory) に対して)正犯,主犯 a principal in the first [second] degree 第一級[二級]正犯
5 可算名詞 【建築】 主構,主材
【語源】 ラテン語「最初の」の意
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なるほど、どうやら名詞の4-a「 (代理人 (agent) に対して)本人」、または4-b「(従犯 (accessory) に対して)正犯,主犯」という意味らしいですね。
⇒ つまり、“{netabare}姫様ご本人が主犯者であらせられますぞ{/netabare}”
この意味深なタイトルから醸し出される威厳の前に、私(わたくし)めは、「ははぁ!姫様の思し召しのままに!」と畏まって本作を拝聴し奉(たてまつ)ったのでありました。
◎完走後の率直な感想
ああ、面白かった。もう一周しよう!
同じ大河内一楼氏がシリーズ構成を担当した2016年の作品『甲鉄城のカバネリ』が、イマイチ世界観設定がいい加減で、キャラもブレまくっており、シナリオもバタ臭くて、一回見たらもういいや・・・という感想しか残らなかったのに比べると、本作は、世界観・キャラ設定・シナリオとも、良い意味で「節度」が保たれていて、『コードギアス』みたいに、桁外れに面白い、とか、ラストで凄く盛り上がる、とかはなかったけれど、十分以上に楽しめて、毎話とはいかないけれど、半分くらいの回はこれからも繰り返し見直して楽しみたいな、と思ってしまうくらいの魅力のある作品と思いました。
・・・この「節度ある(temperate)」という所が肝要で、英国史の中でも謹厳な紳士淑女の時代として知られるVictorian Age(ヴィクトリア女王時代)をベースにした舞台設定が実に秀逸と思いました。
◆スチームパンク(蒸気動力社会をベースとする戯言(たわごと))の良作
大英帝国が繁栄を極めたヴィクトリア女王(在位 1837-1905年)時代の上品・優雅な上流階級の生活様式と、その一方で、産業革命の副産物として大量に発生した都市市民たちの不平不満との密かな対立構図に、やや下った時代・別の国の産物である「ベルリンの壁」や「革命」のモチーフを取り込みながら、巧みに構築された、統一感のある世界が本作の影の魅力。
何でも、1802年に英国で初めて実用化された蒸気機関車(steam locomotive 略してSL)が、大量輸送手段として威力を発揮し始め、鉄道網が次々と敷設されていったこのヴィクトリア時代、およびその次のエドワード7世(在位 1905-10年)時代をモデルとして作品舞台が考案されているSFのことを「スチームパンク(steampunk)」と呼ぶのだそうです。
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wikipediaでの「スチームパンク」の説明
スチームパンク(英語: steampunk)は、サイエンス・フィクションのサブジャンルの1つである。
(途中省略)
蒸気機関が広く使われている設定で、イギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝の雰囲気がベースとなっている世界観である。
イギリス以外の国も概ねそれと重なる時代、アメリカでいえば西部開拓時代、日本でいえば明治時代~大正時代頃の近代化を推し進める文明開化から大正ロマンの雰囲気が代表的世界観である。
そのような世界観の中にSFやファンタジーの要素を組み込む。
ヴィクトリア朝の人々が思い描いていたであろうレトロフューチャーな時代錯誤的テクノロジーまたは未来的技術革新を登場させ、同時にヴィクトリア朝のファッション、文化、建築スタイル、芸術を描く。
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私は本作を見始めるまで、この言葉を「スチーム“バ”ンク」と読むのか?と長い間勘違いしていました(・・・「知らない子だな」と思いつつ)。
なるほど、これまた一つ勉強になりました。
◎結論
これは良いアニメ。
アニメを普段見ない人でも、歴史好きな人にはお勧めできそうな作品かも?
◆視聴メモ
{netabare}
・「アルビオン(Albion)」は、英国の雅名(美称)であり古名(古称)。
なお、類似した言葉として「ブリタニア(Britannia)」があるが、こちらは専ら古名→それぞれ、同じ島国である日本の別称「扶桑」(雅名)と「大和」(古名)に相当する。
・第1話に出てくる「クイーンズ・メイフェア校」の校舎のモデルは、たぶん「水晶宮(The Crystal Palace)」(※1851年にロンドンで開催された第1回万国博覧会のメイン会場として建設された世界初のガラス張り巨大構造物)。
・第2話のプリンセスと侍女ベアトリスの会話に出てくる「ヌワラエリア」は、インド洋のセイロン島(現スリランカ国)の中央高地にある紅茶の名産地、およびそこで採れる高級茶葉の名称。
・第4話で登場する女王陛下の顔形(かお・かたち)が、そのまんまヴィクトリア女王!ノルマンディー公はエドワード皇太子がモデルか?
・第1~10話まで、一貫して大河内一楼氏が脚本を担当しており、全く文句の付けようのない完成度だったが、ラスト2話は意外と平凡な出来でちょっと拍子抜け(※本作の個人評価が ★ 4.1 と余り伸びなかった主要因)。
ここだけ何故別の人が脚本を担当したのだろう?橘正紀監督の方針?{/netabare}
◆制作情報
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監督 橘正紀
シリーズ構成 大河内一楼
脚本 大河内一楼、檜垣亮
キャラクターデザイン 黒星紅白(原案)、秋谷有紀恵
音楽 梶浦由記
アニメーション制作 Studio 3Hz × Actas Inc.{/netabare}
◆各話タイトル&評価
★が多いほど個人的に高評価した回(最高で星3つ)
☆は並みの出来と感じた回
×は脚本に余り納得できなかった疑問回
=============== プリンセス・プリンシパル (2017年7-9月) =============
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第1話 case13 Wired Liar ☆ 亡命希望者エリック ※説明回
第2話 case1 Dancy Conspiracy ★★ チェンジリング作戦、プリンセスの意思、取引成立
第3話 case2 Vice Voice ★ 機械の喉(ベアト)、空中戦艦グロスター潜入・共和国紙幣原板回収任務
第4話 case9 Roaming Pigeons ★ ケーバーライト採掘場・新型Cボール奪取任務、女王陛下との接見、チーム“白鳩”
第5話 case7 Bullet & Blade's Ballad ★ 極東からの使者(堀河公)、王室専用列車襲撃事件、密航者ちせVS藤堂十兵衛
第6話 case18 Rouge Morgue ★ 肢体安置場潜入・暗号表回収任務、ドロシーの屑親爺 ※挿入歌「moonlight melody」
第7話 case16 Loudly Laundry ☆ 洗濯工場潜入・毒ガスジャック拿捕任務 ※挿入歌「もひとつまわして」
第8話 case20 Ripper Dipper ★★ オライリー卿邸監視任務、黒いベールの女、王女とアンジェの過去 ※種明かし回
第9話 case11 Pell-mell Duel ★ ちせ視点の学園生活&スパイ活動、決闘
第10話 case22 Comfort Comrade ★ スパイ養成所同期生エレノア、X'mas、二重スパイの死、L更迭
第11話 case23 Humble Double ★ プリンセス暗殺命令、体制変更・ゼルダ登場、二人の亀裂、女王暗殺&革命計画
第12話 case24 Fall of the Wall ★ 続き、二人の絆回復、カサブランカの休日 ※ED「The Other Side of the Wall」{/netabare}
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★★★(神回)0、★★(優秀回)2、★(良回)8、☆(並回)2、×(疑問回)0 ※個人評価 ★ 4.1
OP 「The Other Side of the Wall」
ED 「A Page of My Story」