じぇりー さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「ゴースト/秩父の幻」 ←元ネタ分かる人いる?あの陶芸のシーンがさ…(関係ナイ
幼い頃、秘密基地で遊んでいた仲良し男女6人組が、一人の女の子の死をきっかけに疎遠になったものの、数年を経て高校生になった子供たちの中で当時リーダー的存在であった主人公・じんたんの前に、死んだはずの少女・めんまが現れることからスタートする物語。
ここまでの設定だけ見ると、じんたんにしか見えない「めんま」というゴースト的な存在から、ファンタジー作品なのかな、と思いきや結構ストレートに青春劇だった。
「めんま」だけが本作における唯一のリアルとかけ離れた要素であるが、じんたんにだけ姿が見え・声が聞こえているという状態なのに、画面上ではまるで現世に普通に存在しているかのように描かれており、ファンタジックな表現はほぼ皆無といってよい。
例えば後半辺りからの、{netabare}じんたん以外のメンバーがめんまの存在を確信した後の、恐らく彼らの目にはひとりでに日記帳のページが開き・ペンが動いている状態に見えているはずのシーンなども、めんまがギリギリ見えるか見えないかのカットになっており、怪奇現象的に描いていない{/netabare}ことで、本作をより人間ドラマに重きを置いて作ることに成功していると言える。
私個人としては、何とでも表現できるアニメという媒体において、敢えて出来る限り「日常」に寄せたこの作品の作り方には、好感が持てた。ある意味チャレンジだっただろうに。
さて、そのような感じで純粋な青春劇・人間ドラマとして本作を捉えた感想をば。
冒頭で、じんたんを始めとするメンバー「超平和バスターズ」を仲良し男女6人組と書いたが、実際彼らが心底固い友情で結ばれた面々だったら、どんなにか陳腐で退屈なストーリーとなったであろう。
主に、愛憎入り乱れた三角関係が交差しまくった非常に面倒くさい人間関係と、「めんまの死」に対する各々が抱えるトラウマや罪悪の念のようなものが、数年の歳月を経ても彼らの心を縛り付けていて、それが「めんま」の出現によって徐々に変化していく様が描かれている。
にも関わらず、不思議と思ったほどの重々しさやドロドロ感はない。これは恐らく、めんまの無邪気さや天真爛漫さに救われている部分が大きいように感じる。
一人一人の心の機微を非常に丁寧に描いてはいるが、くどくなりすぎず、かといって無茶な突っ走りもなく、1クール全11話で無駄なく終わらせた優秀ぶり。
このような作品で「よかった」と思うことはあっても、感動、ましてや涙などまず流さない私の涙腺を緩ませた数少ない作品の一つとなった。
ラストシーンは、悩み・傷つき・気付き・成長する「青春を謳歌する少年少女たち」にこそ許されるような、気恥ずかしくなるくらい熱いものだったが、確かに胸に響くものがあった。
これといって特筆すべき突飛な設定や出来事がある訳でもなく、ストーリー的には割と「ありがち」な流れに思えるのに、心を揺さぶられたのは、ひとえにこういった「作りの良さ」にあるように思う。
音楽についても述べておきたい。
基本的に、私はJポップのヒットソングのカバーを主題歌に使用する行為は、安直かつ少々ずるい行為だと思っている。
だがこの作品に関しては、作品の内容と楽曲の歌詞とのハマり具合が、原曲のイメージを尊重しつつもオリジナル要素をきっちりと取り入れたアレンジの上手さも相まって「アリ」だと思えた。
あにこれでの高評価も頷ける、納得の作品だと思う。気になる方は是非!