takarock さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
市川春子の作家性
ニューウェーブ系作家の旗手として、
現在最も評価にさらされているのが市川春子かもしれませんね。
短編集「虫と歌」、「25時のバカンス」を経て、
その集大成的な作りになっている本作「宝石の国」。
本作に限らず、市川春子作品は、
テーマ性、コマ割り、線、ベタ塗り、トーン使いと、様々な語り口から語られていますけど、
前衛的で野心的、多分に狂気を孕んでいるけど思索的で繊細・・
そんな市川春子の世界観は、アニメーションという媒体でも十二分に伝わったと思います。
本作のアニメ化が決まった頃に、あにこれの仲間と
「あまり大衆受けするような作品ではないよね・・」なんて話をしていて、
危惧していたりもしたんですけど、蓋を開けてみれば杞憂でしたね。
3DCGとのマリアージュ、声優陣の熱演、
なによりも「絶対に原作ファンの期待を裏切らないものを作る」という
制作陣の気合を感じました。
原作者の市川春子とも蜜に相談して制作していったとのことで、
そうした努力が見事に結実した出来だったと思います。
市川春子の描くテーマというのは、短編集の作品の頃からずっと一貫していて、
代表的なのは、
①あらゆるものが生物として描かれる。
②身体的な欠損。その喪失と再生(あるいは再構築)。
③疑似家族。
④人にあらざるものとのコミュニケーション。
こんなところでしょうか。
これらのテーマは、当然のごとく本作にも踏襲されていて、
本作を視聴して改めて感じたのは、
なんだか「新世紀エヴァンゲリオン」のようだとw
{netabare}突如倒すべき敵として現れる(使徒のような)月人、
「すべてはシナリオ通り」とか今にも言いそうな金剛先生、
喪失と再生(再構築)によって変容していくフォス、
そして、かつて「にんげん」と呼ばれる存在が居て、
骨(宝石)、肉(アドミラビリス)、魂(月人)に進化していったとのことですが、
異形の敵と認識していた相手が元は同じにんげんだったなんて世界観は、
やはり「新世紀エヴァンゲリオン」を想起してしまいますw
牽強付会の説だというのは自覚していますw
もうちょっとしっかり考察しないといけないんでしょうけど、面倒なのでごめんなさいw{/netabare}
まぁそういうこともあってか、現在連載中の本作ですが、
その結末は「おめでとう」ENDになるのではないかと予想していますw
あるいは、デウス・エクス・マキナ的なENDになるのかもしれませんが、
いずれにしても、しっかりと伏線を回収して整合性の取れたENDにはならないだろうと。
何故ならば、それが市川春子の作家性だと思っているからですw
たとえば、「ゼーガペイン」や「無限のリヴァイアス」といった作品は、
世界観の構築、舞台設定、ストーリーなどがプロットの段階から練りに練られた作品で、
考察すればする程その見返りが期待できるのに対して、
本作をはじめとする市川春子作品は、世界観の構築や舞台設定からの考察アプローチでは、
行き詰まると私は思っています。
理屈からでなく感性(作家性)から本作を読み取る、
そちらの方がより良い結果を得られるでしょうね。