くせ毛 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
レベルアッパー
酒、女、そして薬。
でもさ、薬なんかなくても、やつらはロックスターでいれたはずなんだ。
そんなもんに頼らなくたって、やつらは僕たちの心に最高の衝撃を与えることができるはずなんだ。
『レベルアッパーか。私でも能力者になれる、夢のようなアイテム。』
誰もが味わったことのある疎外感。
苦しい、つらい。
『レベルなんてどうでもいいことじゃない。』
努力してなんとかなる人間はいい。
努力してもどうにもならない人間だっている。
努力しても努力しても、それでも世間からは「落ちこぼれ」だと揶揄されるその悔しさは、ひとえに「どうでもいい」などという言葉で片付けてはいけないのだ。
しかし、それは努力を諦めてしまってもいいということとは、また分けが違う。
ズルしたツケは払わなければならない。
バレないように、そう思った時点で自分自身に対して嘘をついていることに変わりはない。
ならばどうすればよい。
苦しさから逃れるために、自分の能力を見限って楽になってしまうことが、それほどの悪なのか?
ひとつ、苦しさはなくならない。
たとえズルをしたところで、苦しさを完全に消すことはできない。
しかし、和らげることはできる。
『白井さんと仕事したり、佐天さんと遊んだり、毎日楽しいですよ。だって、ここに来なければみなさんと会うこともできなかったわけですから、それだけでも、学園都市に来た意味はあると思うんです。』
『私の親友なんだから、そんな悲しいこと言わないでください。』
投げ出した場所こそが自分の居場所である黒妻。
投げ出しても、それでも守りたいと思う友人を持った佐天さん。
自分の存在意義なんて、結局は主観でしかない。
しかし、ただ「そこにいたい」という気持ちを持つことができる権利はだれしもが持っているはずだ。
それにはきっと、レベルアッパーなど必要ないはずなのだ。
ロックスターだって、薬なんてなくても、ただ純粋に「ステージにいたい」とだけ願える存在になれるはずであったのだ。
救えないものは救えない。
だけどそれは、零れていった分を考えなくてもいいってこととは違うんだと思う。