「劇場版カードキャプターさくら 封印されたカード(アニメ映画)」

総合得点
74.2
感想・評価
225
棚に入れた
1679
ランキング
937
★★★★☆ 4.0 (225)
物語
4.0
作画
4.0
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

因果 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「私は、小狼くんが好き」

テレビアニメ版終盤でやっと「自分の本当のきもち」に気付くことができた木之本桜。しかしそれを小狼に伝えることができないまま、結局彼は美鈴とともに香港へ戻ってしまい、テレビアニメ版は最終回を迎えてしまう。

つまり最大のオチは劇場版におあずけになったというわけだ。

これは大きな賭けである。ここまで引っ張っておいて、「劇場版」という俎上に自ら上がっておいて、並大抵のカタルシスしか醸出できないなどということがあろうものならば、我々の落胆はえもいわれぬほど深刻なものだっただろう。

しかしその点については安心していただきたい。

言ってしまえばこの映画は木之本桜に「好き」と言わせるためだけの作品なのだが、そこに至るまでの過程に違和感がないのが恐ろしいのである。全ての事物がゴールありきでお膳立て的に配置されているのにもかかわらず、それらがさも必然であるかのように、ごく自然なふうに機能している。

例えばこの映画における実質的なラスボスである「無のカード」。これは、クロウカードの創造主たるクロウリードが禁忌として屋敷の地下深くに封印した、というまさに後付け的なカードであり、要は「木之本桜と小狼の恋心を成就させる」という目的ありきで存在させられた道具である。しかしそこに一切の嫌味を感じさせないのがこの作品のスゴイところ。まるでそういう運命がもとより存在しているかのように思えてしまうのだ。これは、キャラクターの持つ性質、世界観の持つ性質にそれぞれ仔細な理解が及んでいなければ到底できない所業である。脚本家の手腕に脱帽だ。

外面的な事柄についての言及はこの辺にしておいて、内面にも触れてみようと思う。

本作でもテレビアニメ版同様に多彩なキャラクターが登場するが、その誰もが「成熟して」いる。

大道寺知世はそもそも元から達観しきっているし、美鈴は半ば桜に小狼を奪われたような境遇でありながら「私は自分のことを一番好きになってくれる人じゃなきゃ嫌なの!」と小狼からの卒業を果たしている。

そして誰より変わったのは小狼。テレビアニメ版初期ではイカニモ小学生男子という感じで不器用でせっかちだった彼が、桜への告白を通じて確実に大人になった。昔は「さっさとしろ!」「トロトロすんな!」と散々檄を飛ばしていた彼が、本作では桜からの返事を柔和な表情で待ち続ける様子を見ると「お前…成長したな…」と実父のような気持ちになる。

しかしそんな中で唯一燻ぶり続けている者が一人。

そう、木之本桜である。

周囲が成長していく中で、彼女だけが、一言「好き」と言えずにここまできてしまった。

先にも述べたが、つまり本作は木之本桜の禍根を払拭するための、つまりパズルのラストピースを埋めるための作品なのだ。

それではいったい木之本桜がどのような過程を経て告白へと至るのかについてはぜひ皆さんの目で確かめていただきたい。というのも、「好き」という言明そのものは重要ではなくやはりそこに至るまでの桜の葛藤や逡巡を前提としたうえでの勇気ある決意表明としての「告白」にこそこの映画の真価があるからだ。

クリアカード編放送開始ということもあり、現在は各映画館で本作のリバイバル上映が行われている。私も先日都内某映画館にて本作を視聴した。恥ずかしながら大号泣してしまったのでマジで一人で行ってよかったなと思った。

桜ちゃんの雄姿を、恋の行方を、ぜひ劇場の大きなスクリーンで楽しんで欲しい。

ではまたクリアカード編のレビューでお会いしましょう。

投稿 : 2018/01/08
閲覧 : 296
サンキュー:

4

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