DEIMOS さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
湯浅版ポニョは宮崎版を超えたか!?
「大衆向け」を狙った湯浅政明監督作品。本人が、インタビューで、アングラ向けの従来路線とは別の作風を志向したことを吐露している。
題材は、少年と人魚の子供の心の交流。すなわち、ポニョ。だからと言って、パクリだなんだというのは野暮。昨今のフィクションは、概ね記号の組み合わせで構成されるので、「(人)魚の少女」という同じ記号を使っているだけ。問題は、ストーリーや絵作りでどれだけのオリジナリティをもって品質を高めているかということ。
その点、表現のスケールでは、本作は、宮崎駿のポニョにも負けず劣らじ。ベースは、リアルな背景描写にしつつ、要所では、湯浅氏独特の大胆な表現が垣間見える。水ブロックの描写全般やダンスのシーンは、見ているだけで心踊る。
ストーリーの点では、人間の暗黒面にも焦点を当てたのは良いが、カタルシスが不十分。人魚を食い物に商売しようとする人間と純粋な人魚という対立が出てくるが、この対立の解消を少年の心の成長に帰結させるのはやや強引か。脚本がベタな印象は拭えない。
人物描写や舞台をリアルにしたのは印象的。舟屋の街並み、山上の神社、養殖センター、廃墟の遊園地、人魚の島などは、風景として絵になる。これらは実在するいくつかの場所の組み合わせであることを監督のツイッターで知ることができるが、中でも、京丹後・伊根町の舟屋の街並みはいつか行ってみたい。1コマ打ち?の超絶滑らかな芝居は懐かしくも新鮮(昔のディズニーアニメのよう)。製作費の制約の厳しい昨今、フラッシュを使っているからこその芸当だろう。
個人的には、湯浅監督は、アングラ系の作風の方が相性が良いように思う。マインドゲーム、四畳半、デビルマンあたりが彼の最高傑作だと思う。