Tnguc さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
【お気に入り】 青春の13ページ
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4人の女子高生が南極へと向かう青春アニメ。まず、「南極」というテーマが良いですよね。異世界とか、学園とか、そんな小規模な世界観のアニメが蔓延る中で設定や物語に奥行きを感じとれますし、文部科学省や海上自衛隊などの協力もあって基盤がしっかりとしています。オープニングの映像から見て取れるように、物語の終着点が南極だと分かっているので、物語のレールが明確だった点も安定感がありました。また、オリジナルアニメという自由な環境が制作チームにとって都合が良かったんだなと思います。とにかくテンポがよくて小気味の良い物語でグイグイと引き込まれますし、そのテンポにマッチした4人のオモシロおかしい女子高生たちが更に物語を盛り上げていて、勢いだけが資本の彼女たちの行動力はまさに青春そのものでした。ときには衝突したり、嫉妬したり、葛藤したりと、女子高生の未熟な一面も描かれていましたが、彼女たちにとってはそれも青春の一コマ。南極への冒険モノではなく、色々な角度から見える青春こそがこの作品の主役なんだと思います。それと、この作品は南極に向かうまでの過程に異様なまでの尺を取っていて、というのも、「夢」や「目標」というのは達成するまでの努力だけが重要ではなく、その道に一歩踏み出す勇気もまた必要となり、この作品では、そういった「第一歩を踏み出す勇気」が、青春というフィルターを通して描かれています。ゆえに、この作品にとって目的地(南極)自体はそれほど重要ではないように見えました。それがたまたま南極だっただけで、別にアイドルを目指そうが、キャンプに挑戦しようが、上野の平和を守ろうが、それが青春に華を添えるものであれば、この作品のテーマ的には何でも良かったんだなと思います。そういうテーマ性もあってか、この作品は南極に到着するまでの過程がとても魅力的なんですよね。逆に、南極に着いてからは消化試合みたいでした。南極ならではの任務や生活感はリアリティーがあって面白かったけど、「別にそれは南極じゃなくてもできるよね?」みたいな人間ドラマも多かった印象を受けました。とくにキマリに至っては、南極に到着した時点、もっと言えば、南極に行くと決意をしたところで物語は完結していたように見えました。
この作品のタイトルでもある「宇宙(そら)よりも遠い場所」、それは日本から見た南極の距離。でも、夢や青春はそれ以上にも遠く、得がたいもの。高校生という多感な時期に、その残りの時間に焦りを抱く等身大の女子高生たちの姿は、受動的な学生たちや、それを通り過ぎてきた大人たちには痛いほど伝わってきます。そんなフラストレーションの殻を破り、後悔しないように突き進んでいくキマリたちの姿を眺めていると、きっと「勇気」を分けてもらえるはずです。よく笑いあっていた、かけがえのない青春時代を振り返りながら、いつか夢見た情熱に、また一歩踏み出す「勇気」の力を。
個人的評価:★★★★☆(4.0点)