前原由羽 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ミューツーと科学技術の類似性
TVの録画を整理していたら、数年前に撮ったものの未試聴のままだったものが残っていました。数年前に再放送されてたのを録画してたっぽいですね。放送されたのが2000年より前らしく、劇場で見たことはないです(というより私が生まれていなかったかも笑)。一方で、その内容には決して時代遅れなところを感じませんでした。
短い時間の中で複数の問題提起を感じとれました。
1.人間の手によって創られた生命体であるミューツーは人間やコピー元であるミュウとどういう立場関係になるの?
2.ミューツーはそもそも何のために創られたの?
3.創られた側(ミューツー)はどう思うの?
映画の中では
1.ミューツーは人間にとっての従属者である
2.遺伝子から生命体を作り出すという研究の一対象として
3.コピーという劣等感の上に、人間の従属者であであることへの怒りを持っている
といったところでしょうか。これを見たときに、どうもリケイなヒトなのか(笑)ゲノム編集技術やiPS細胞関連の再生医療を連想してしまいました。要は、科学技術が先行することで、本来生きていない、生まれてこない生命体が存在するということが、その生命体にとっても第3者にとっても果たして喜ばしいことなのかという生命倫理の問題ということです。デザイナーベビーを始めとする命の選別、医療に関わる法整備、高額医療を受ける権利争いなどなど...本編ではアイツーがその当事者なのですが、自身が生まれてくることをアイツーが望んでいたかというと、そうでもなかったし、アイの母親に至っては否定していました。
また、ミューツーがAIという科学技術の延長のようにも見えました。AIに疑似意識なるものが組み込まれたら(産生されたら)、人間とAIとの従属関係が逆転することも考えられそうです。
ミューツーは自己の現状を受け入れることで、自身の主義主張を止めましたが、現実に同じようなことが起こったらどうなるのでしょうか...新しいものを発明する研究だけでなく、その発明の使い方についての研究も必要になってくると思います。