101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
脚本も人生も詰んでからが本番です
まず、やっぱり本作はAqoursの物語に徹した方が断然いいな。という感想が残りました。
メタフィクション要素も絡めつつ先代のμ'sも意識したシナリオを展開した
1期もアリだと当時は思っていました。
ですが2期を観て、例え既視感があっても、粗があっても、
Aqoursに集中して描き切った方が清々しいと感じました。
脚本は強引に感じたことも多々ありました。
ただ『ラブライブ!サンシャイン!!』は立ち上げ当初から
逆境こそ輝きの源……という考えをこじらせたのでは?
という不安要素もあったコンテンツ。
例えば学校の廃校は“決定事項”という初期設定があるなど、
苦難の度合いや性質が厳しすぎるのでは?という懸念がありました。
最初から終わってる!?ような世界観でアニメ化をふられたら、
メインシナリオはあり得ない奇跡の連発を狙うか、
残酷な事実を覆せないなりの輝きを求めるか……。
いずれにせよ隘路を縫うような展開を多用する他ありません。
その上、沼津ご当地アニメとしての聖地巡礼ルート開拓。
忘れ去られた特技(例えば千歌の習字とか)や、
他のメディアミックス作品で発掘されたキャラ要素の映像化。
さらには新たな“カップリング”の可能性追求。
などなど、サブでやるべきこと、盛り込みたいネタは山ほどあります。
それらが端的に表れたと思ったのは第三話。
初っ端から{netabare}「ラブライブ!」予選と学校説明会のダブルブッキングという{/netabare}
試練の無茶振りで、Aqoursの進路と共に、自ら脚本の幅をも狭めた上、
早々に、思い付いた打開案が次々とキャラネタ映像化される、
ある意味、脚本家・花田十輝さんらしい、カオスゾーンに突入w
視聴していて今夜はもうダメだwと私は匙を投げかけました。
ですが、それでも諦めないキャラや脚本を眺めている内、
ふと人生において、この袋小路に迷い込んだらもうお終いだろう……。
そう思い込んでいた苦境に陥った後も、人間は意外と足掻けるものだ。
との着想が浮かんで来ました。
尚も、設定は破綻気味で、展開に突っ込みながらではありましたが、
最後には、私はAqoursも脚本も応援しながら観ていました。
何だかんだ結局、三話だけは三回観ていたりw
私の場合は、この三話で難局でも諦めずもがけば得るものがある。
という物語のテーマを掴めた手応えがあって、
以降も、楽しんで視聴することができました。
ただ、もし、それがテーマだったとしたら、
Aqours全体を振り回す無理難題への対応で、
メンバー個々人の成長が隠れた感があった全体構成が、
少々、勿体ない気もしました。
よくよく考えたらスクールアイドルの活動を通じて、
Aqoursの9人はとても濃密な体験をしています。
例えば{netabare} バラバラになっていた三年生三人はより強い絆で結ばれましたし、
引きこもりの堕天使が人前で歌い踊るなど凄い進歩です。{/netabare}
こうしたメンバー個人の変化を掘り下げていって、
彼女たちが掴んだ“輝き”をもっと具体的に語っていった方が、
より多くの人に伝わったのでは?と思います。
この辺りについては今後の展開での補完を望みます。
楽曲は1期より2期の方が『ラブライブ!』らしい感じはしました。
1期はスローテンポのバラード曲が目立ちましたが、
2期は和風で弾け、アクロバティックに弾け……。
とにかくステージ上のAqoursが元気で楽しげなのが好印象でした。
……とか言いつつ私が一番グッと来たのは、
バラード曲{netabare}「空も心も晴れるから」の全員ver{/netabare}挿入シーンだったりしますが(汗)
その他、Aqoursが過去にリリースしたシングル曲及びその世界観に
スポットライトが当たったのも嬉しかったです。
{netabare}1期ではサビのフレーズをちょい借りされただけで終わった
1stシングル「君ここ」が挿入されたり、
2ndシングル「恋アク」の舞台となった水族館が登場したり……。
ただし3rdシングル「HAPPY PARTY TRAIN」の如く、
マイクロバスが夜空を飛んだファンタジー展開には唐突感がありましたがw{/netabare}
巷では、詰んだwだの、オワタwだの、もうダメポwだの
割と簡単に諦める言説に溢れていますが……。
行き止まりでこそ、どれだけシナリオを描くことができるか、
人生の真価が問われる。
個人的評価評点では、アニメ単体だと普通怪獣なメディアミックスの一端ですが、
心に残した輝きの養分は意外と豊富。
ふと、振り返ることも多い作品になりそうです。