01oinaris さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
生きるとは何か?を考えさせられる微ホラーアニメ
この作品は私の大のお気に入り。もともと高橋留美子好きからアニメ好きになったのだが、この作品を見て鳥肌が立った。
ギャグ・ラブコメ・アクション・ホラーサスペンス、得手不得手なくどんなジャンルでも一流作に仕上げてくるのはさすがです。
本作は400年前に人魚の肉を食べて不老不死になった主人公・湧太が、同じく人魚の肉を食べて不老不死になった真魚という伴侶を得て、不老不死を治す方法を探して旅をする、というお話。
人魚の肉は劇薬で、うまく体質が合えば不老不死になれるが、そうではない大半の人間には猛毒であり、口にした刹那にもがき苦しんで絶命するか、半魚人のような「なりそこない」と化し、知性も理性も持たない化け物として彷徨うことになる。
運良く不老不死になれたとしても、もはや普通の人達と同じ生活を送れない。妻と共に年老ることもできず、人と交わること無くただ悠久の時を孤独に過ごすことになる。
つまり人魚を口にしたものは皆、人間としての生を抹殺されることになる。
にも関わらず、不老不死を求める人間たちの物語、人間の悲哀がこの作品のテーマ。
人間の欲深さ、おぞましさ、業の深さ、エゴイズム…人間の醜さや儚さが「もはや人外と化した不老不死の主人公たち」の観点から描かれている。
全般的に重苦しく、笑える要素はほとんどありません。(しかも最終2話は残酷すぎてTV放送できず、DVDのみでR15指定)
各話(概ね2話でひとつの話)終わるたびに、生きて死ぬことの意味、すなわち人生の存在意義を考えさせられます。普通に生きて、普通に年老いて、普通に死にたい…この言葉が胸に突き刺さる。
この先湧太と真魚は、あと何度同じような人間のエゴを見続ければ、悠久の人生に終止符が打てるのか?
ただ、悲しいだけで終わらないのが本作の良いところ。目を覆いたくなるような人間の醜い有様を見ても、必ず主人公たちは明るく前を向いて進んで行く。不老不死人生の終焉を目指して力強く進む姿に希望と生きる活力を感じられます。
超個人的解釈ですが…不老不死とは、古来より時の権力者による切望の象徴。
不老不死を「富・権力」に置き換えて視聴しても面白いかも。庶民が渇望する富・権力。手に入れようとして「なりそこない」になるか、運良く手にした途端に「普通の人」として生きていけない。それでも人は手に入れようとする。様々なものを犠牲にして…
OP/EDはとても良い。物悲しいOP曲、少し明るいED曲、どちらも本作に調和しています。
作画は古臭い昭和テイストがあり、最近のアニメしか見ていない若い人たちには苦しいかもしれない。でも間違いなく隠れた名作です。全13話と見やすい長さですので、是非一度ご賞味あれ!