タマランチ会長 さんの感想・評価
2.4
物語 : 2.0
作画 : 1.0
声優 : 2.0
音楽 : 5.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
すべてをぶち壊したのは作画崩壊
私は実写系青春恋愛群像劇は大好物です。この作品の作風から、私の好みのストライクなのは間違いありませんでした。当然期待しました。しかし、その期待は1話から暗雲が立ち込め、最後まで改善することはありませんでした。
その経緯を1話から振り返ってみます。
2話までの感想
OPはやなぎなぎと北川勝利。雰囲気はすごくいい。・・・だけれど、いろいろと惜しいところが目白押し。作画が崩れるというか、キャラでザ段階でデッサンが狂ってるんじゃないかと思えるくらい崩れている。背景と人物を比べて人物が浮いてしまうような画面処理。OPの出だしの両脇を電車が通る演出も、目がチカチカするような感じで全然いいとは思えない。引っ越しの荷物を出しておいてるんだけど、置いた瞬間消えてしまったように見える。毎週見せるOPからこのクオリティーなのかと思うと、不安がつのる。水族館で、クラゲ越しに見れば光の屈折で人物がゆがむはずなんだけど、それを無視。
専門学校生が作っているかのような拙さを感じます。多分スタッフが若いのでしょう。が、これまでの実写系のアニメ、長井龍雪監督やPAワークスの諸作品と比べるとかなり見劣りするし、不自然さが気になって物語に入り込むのを邪魔している。
4話まで
陽斗や夏目は、自分の恋愛に夢中で周りがホントに見えていません。実際そういうもんなのでしょうか?この頃の年代と言えば、異性はみんな自分に気があるんじゃないかと思い込んでいるものだと思うし、周りは夏目や主人公の意中の人を知っているのに、陽斗や夏目がそれをみじんにも感じていないところとか、陽斗なんか夏目に好きなヤツいるのかとか聞いちゃって、無神経すぎる、不自然だな、脚本的なご都合主義なのかと感じてしまう。(あの夏なんかは、自分が誰に想われているかってのはお互いうすうす気づいている様子がよく描けていたように思います。)こういうリアリティーのなさは問題。
6話まで
夏目が自分の気持ちに区切りをつけると言って、陽斗に消しゴムを渡しました。このときの夏目の表情は、なんだろううれしいのか悲しいのか分からないぼんやりとした顔…その後「宿題が終わったようにすっきりした」と友達に言っていましたが、どう解釈すればいいのかまるで分からない。
それに対して陽斗の表情も過去のエピソードのことを思い出せずにポカンとしていましたが、アホじゃないんですから夏目の気持ちを考えたり、周りの反応に気を付けたりして、自分に気があるのではないかくらいは気づかなくてはいけません。そういうそぶりもないのは、脚本の都合上そうあらなくてはならないのか、つまりはご都合主義なのかと感じてしまいます。こういった部分が改善されない限り、実写系青春アニメとしては成功しないでしょう。この作品は3話以外はキャラデザと作監が総じて悪い。目の位置のデッサンが素人くさく崩れているし、焦点があってない。ぼんやりしたキャラの表情が、リアルできれいな背景から浮いてしまっています。
7話
7話で、小宮が夏目に「先輩をデートに誘っていいか」と了解を取りにいきます。話としては盛り上がります。しかし、なぜ小宮が夏目にそんなことを聞きに行くのでしょう。現時点で、主人公の想い人が夏目だということは分かっているのですが、夏目はそれに気づかず陽斗に想いを寄せていたという段階で、夏目にそんなことを言いに行く義理などないはずです。
そこで、まさかの「だめ」発言が飛び出しました。陽斗を吹っ切った後、受験で世話になって気持ちが動いたということで、まあいいでしょう。しかし、この「だめ」発言と似たようなシチュエーションの作品がありました。「Orange」です。この作品は世話の焼ける翔が嫌いで自分は酷評だったのですが、翔が先輩から告られて、お互いに気になっている段階の菜緒に、手紙(紙切れだったと思うけど)で付き合ってもいいかなと聞きに来た。菜緒はこれまた紙切れに「だめ」と一言書いて下駄箱にしのばせるのですが、その「だめ」の文字が、なんとも健気で味わい深いものでした。比べちゃなんだけど、Just Because!のダメは、小宮の勢いでの了解とりと、夏目の身勝手な思いからとっさに口をついて出ただけみたいな感じで、なんとも味気ないなと。
8話
小宮の株が急上昇。デートを取り付けるためのラインの文言を悩んだり、飼い猫が送信しちゃったり、表情がはっきりしている上、感情の起伏がはげしいから実に分かりやすいです。主人公のデートへ向かう道中、夏目と鉢合わせして、ついてくる夏目。小宮と合流し、「ダメって言ったのに」「会長の許可いります?」「じゃあ何で聞いたの?」「なんとなく」と、実に彼女らしいテキトーな受け答えでした。
細かいところになりますが、部室でアルバムをめくるシーンがあるんですが、そのアルバムが薄っ!ページが1枚しかありません。たぶん表紙裏表紙のセルが1枚抜けています。顔のデッサン、右目が小さくなることがしばしば。ただでさえ感情を押し殺して表に出さないキャラが多いのに、これじゃ微妙な表情芝居は無理でしょう。だから小宮みたいな分かりやすい表情のキャラはそういう影響は受けにくい。きわめつけはラストシーン。小宮と別れた数秒後、同じ方向から突然現れるきれいになった森川さん。きれいになったばかりでなく、体のサイズまで大きくなっていました。ほとんど泉と背丈が変わらないし、顔は男の泉より大きかった。この辺が作画の甘さ。作画監督と作画マンがしっかりしないといかん。
最終回まで。
小宮がまぶしかった。後はダメ。ライン1か月未読とか、大学に進学した夏目の進路を主人公が知りながら(当然友達が教えないわけないですから)連絡もとらないとか、もうアホかというくらい不自然なところがありました。こういうのは実写系恋愛青春群像劇にとっては致命的といっていいくらいのリアリティの低さ。
総評
詩情豊かな演出。全体としては、なるほどやりたいことは分かるし、意欲も買う。背景きれい。実写的テンポやカット割り頑張っている。音楽もよい。しかし、圧倒的に作画がダメ。最終回なんか、より目のまぬけな表情、安定したデッサン狂い、顔の大きさ変わる動画、パースおかしいだろっていう背景とのアンバランスなどなど。シナリオはほとんどストーリー性がとぼしいのだから、演出や雰囲気で勝負しなければならないのに、これだけボロクソの作画ではすべてぶち壊し。スタッフの志がもったいない。
作画が作品の全てをぶち壊した。それを修正できなかった監督の力量のなさも嘆かわしい。それでも方向性は間違っていないと思うので、次回作では作画監督をしっかりした人に任せて、ぜひリベンジしてほしい。