「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.9
感想・評価
699
棚に入れた
3102
ランキング
347
★★★★★ 4.2 (699)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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◇fumi◆ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

大東亜戦争末期の庶民視線をギブミーチョコレート風に描いた習作。

2016年公開の劇場用アニメ 129分 2018年には160分版公開予定

原作 こうの史代 監督脚本 片淵須直 音楽 コトリンゴ 制作 MAPPA

舞台は昭和19年広島県呉市。

制作資金をクラウドファンディングと言う形で一般から調達して創られた作品。
現在のところ最新のキネマ旬報2016年度日本映画で、
識者及び読者両方でBEST1に輝いたことで一躍有名になった作品。
翌年の日本アカデミー賞(ちょっと笑)ではアニメーション部門で最優秀賞受賞。
ちなみに優秀賞は、「君の名は。」(最優秀脚本賞)「聲の形」「ルドルフとイッパイアッテナ」「ONE PIECE FILM GOLD」

原作は未読ですが、完全に女性の視点から描かれているためアニメ版では男性的視点を追加しているそうです。

すず CVのん(能年玲奈)
北條周作 CV細谷佳正
水原哲 CV小野大輔

感想ですが、
戦争末期の日本国内の最前線の一つでもある呉の人々を、
リアルに描けたかどうか疑問な前半でした。
主人公の声があの時代の少女の声には聞こえませんでした。
これは海外の視聴者の同情を引くための大震災アナウンス的萌え声なのかと勘繰りました。
で、前半を見ていて、これは「世紀の駄作」では?と思ったのが本音です。
戦時下での萌えアニメを作りたいのであれば、広島長崎を避けるのが良心的だろ、と。
能年玲奈の声に関しては最後まで受け入れられませんでした。

ところが、本土空襲が激化してからの描写は現代考えられる限り最上ののリアルさを追求していて、
「これは観ておかなくては!心に焼き付けなくては!」と思わせる見事なものになりました。

野坂昭如作でジブリが制作した「火垂るの墓」と比べられるのは当然ですが、
空襲の描写に関してはこちらが圧倒的です。
終戦後の日本「ギブミーチョコレート時代」に関する描写も優れたものでした。
そして、お涙頂戴に泣かされました。涙もろいのです。

この作品の評価は簡単ではありません。
「二十四の瞳」や「はだしのゲン」や「火垂るの墓」と同様な、
現代における「大人の事情」が少なからず作用しているのです。
富野由悠季氏はこの作品を、戦争について議論する叩き台であると評したそうです。
この物語からはお涙頂戴以外に何も伝わってきません。
だからこそ世界のすべての人が見たうえで討論すべきものなのです。

答えは作品内にはありませんでした。
自分自身の心の中に答えを作り出していく、糧となる物語の一つ。
感動したという人がいたら私はこういいます。

「自分と正反対の受け止め方をした人の意見を聞けるのならその感動は意味があった」と。

戦争は今この時もどこかで続いているわけで、お涙頂戴では済まないのも事実です。

まずは必見の秀作。いろいろな人の意見が聞きたい作品になりました。

追記
広島への原子爆弾投下が軍事基地呉をねらったものでは無かった、
人口密集地をねらったものだったという事実を伝えた作品としては・・・
海外の人は分かりましたでしょうか?

投稿 : 2018/01/02
閲覧 : 435
サンキュー:

50

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