ogahiroaki さんの感想・評価
3.1
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
これはホラーなのか?
"泣ける"、"癒される"との高評価に期待して視聴したもののあまり満足できません。キャラ、絵、音楽、シナリオ構成のクオリティがどれも高いのですが、どこか感じる重さと怖さに引っかかりを感じました。
まず裏題材が重いです。宿屋に奉公に出された少女達というどこかで見た暗喩もそうですし、生死にまつわる話が多い後半もそうです。ロリ萌え幼女の無垢さだけを使って人生の儚さとか憂いを描いていたのにちょっと抵抗感があります。
主人公の柚は底無しのピュアさと小動物のような耳が可愛いんですが、その底の見えないピュアさが逆に怖い。穢れ無き純粋無垢な心って逆に他人にの負の感情に同情も共感もできないことだと私は思うんです。だから共感も同情もせず人の心の美しさだけを見出して涙を流せてしまう彼女は人間離れしていてただただ気持ち悪く見えてしまいました。人の弱みと秘密を知って「人の心に触れられて幸せ」と泣き、客が望む世界のためならば幻想さえも受け入れてしまえる彼女はかなりヤバイ奴です。柚は穢れなき純粋無垢さで全てを受け入れ中居仲間と宿泊客、そして視聴者に"浄"を与えるだけの器になっているようで、その役割をロリ幼女に負わせるのはちと残酷だなと思いました。やるなら友情物語だけのもっとライトな内容にして欲しかったです。
そんな柚への違和感もあったせいか正直一つ一つの話もそこまで感動的なものではなく、良い話ではあるけど泣けるほどではない…くらいにしか感じませんでした。
それを構成の上手さ、伏線の落としからクライマックスにかけて音楽と絵の力で一気に持ち上げる演出の力強さが感動を呼んだのだと思います(そこに強引さもあったんですが)。その中で目立っていたのはホラー要素です。伏線で作る不安感や違和感はやけにホラーじみていて怖かったです。例えば5話のBパート。虹が世界を彩るオチに繋げるため褪色した薄暗い世界に描かれているんですけど、室内まで色褪せている上、淡々と鳴り響く機織りの音と血のように真っ赤な傘がめちゃめちゃ怖いんですよね。4話Bパートの老人と人形もやたらと薄気味悪いですし、全体でホラー要素の多い演出が目立っていました。
シナリオ構成の上手さと演出を全力でホラーに向けたら結構怖いものができるんじゃないかと。
そんなこんなで良い話だったけど泣くまでではなく、何故かホラーが怖かった不思議な作品でした。