Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
俺が悪役で…じじいがヒーローか…(公式HPより)!
この作品の原作は未読です。
作画は綺麗…ですが、初老のおじいちゃんがやけにクローズアップされていたので、現在の女子化、低年齢化の傾向に一石を投じる作品になるのでは…なんて事を考えていました。
視聴の決め手はやっぱり声優さん…上坂すみれさんに、諸星すみれの名前を拝見したから。
上坂さんは言わずもがなですが、諸星さんは最近よくお見掛けする名前です。
「ハイキュー!!」の谷地さん、「文豪ストレイドッグス」の泉鏡花、「ハンドシェイカー」のコヨリ、 「神撃のバハムート VIRGIN SOUL」のニーナ・ドランゴに「ボールルームへようこそ」の赤城真子ちゃん…
これからの活躍が楽しみな声優さんです。
この物語の主人公は、冴えない58歳のサラリーマンである犬屋敷 壱郎…
58歳にもなって冴えまくっている叔父さんも考え物だと思いますが、娘の友達から祖父と間違われるほど白髪と深い皺が目立つため、外見だけ見ると冴えているところは残念ながら皆無…
性格は温厚で内向的な本分が限りなく先行するため、持ち前の正義感が影を潜めてしまっていることから、家族からも、会社からも疎外された生活を送ってきました。
そんな犬屋敷が一世一代の大勝負で購入したマイホームすら喜んで貰う事ができず、そうこうしているうちに胃ガンが発覚して余命3か月と宣告されてしまうのです。
マイホームを買うって、普通のサラリーマンにとっては並々ならぬ覚悟が必要なことです。
だって、大抵は多額の借金を背負って購入する訳ですから…
多額の借金を背負うということは、会社に自分自身を縛り付けることと同義です。
一般民間企業に勤めていれば、今後どんな情勢が訪れるか予測することなんてできません。
でも、例えどんな情勢が来ようとも、自らの意志で会社に存在し続けなきゃいけないんです。
会社は一昔前の年功序列的な人事は皆無…
能力のある人間は伸びていきますが、それ以外の人間は淘汰される実力主義の世界…
だから会社にしがみつくだけでは駄目で、成果を出し続けなきゃいけない…
これって、案外しんどいんですよね…
だから犬屋敷が購入に踏み切ったのは彼にとっての大冒険だったと思います。
それに対して…正直こんな仕打ちはあんまりです。
自分は家族の喜ぶ顔が見たかっただけなのに…
家族との繋がりももっと大切にしたいだけなのに…
現実では自分の病状のこと一つも家族に打ち明けられないなんて…
ですがこの直後に巻き込まれた事件は犬屋敷にとって幸か不幸か…
今となっては良く分かりません。
自らの身体のガン化要因を排除する…
聞こえは良いですが、現代の医療技術では到底成し得ないことです。
でも、犬屋敷は自らの身体に巣食うがん細胞の撲滅に成功し、物語が動いていきます。
自分の立ち位置をどう考えるか…
例えば、宝くじで1等が当選した二人のその後を描いた物語…そんな感じを受けました。
そう、惨事に巻き込まれたのは犬屋敷だけでは無かったのです。
きっと世の中にヒーローは一人で良いのだと思います。
もし一人だけなら、ヒーローが道さえ踏み外さなければ常に世の中は平和なのですから…
でも二人以上のヒーローがいる場合は話が別です。
絶対優劣が付いてしまう…そもそも正義に優劣なんて無いはずなのに…
比べる相手がいるから歪みや軋みが生じるんです。
でも、きっと悪いのは張本人に位置付けられる一人だけじゃないと思います。
何とかの自由を掲げ、自分を正当化しながら他人を平気な顔して陥れて、何知らぬ顔をしている人たち…
この人たちに罪はないのでしょうか…?
私は決してそんな事はないと思います。
だって、そんな事しなければ最悪は十分に回避できたはず…
人の気持ちを煽った結果がこれです…
今回はその人たちに天誅が下りましたけどね…
だからその結果は自業自得で当然の報い…そう思われても仕方ないと思います。
そして…この物語はただの勧善懲悪モノという器で収まる作品ではありませんでしたね。
まさか、この作品で涙が溢れるとは思いもよりませんでした。
だって、家族の本来あるべき姿と思いが、これ以上無い温かさと優しさに包まれて描かれていましたから…
触れた温もりも…涙のしょっぱさも、そこに自分にとってかけがえのない家族が存在した証…
こうして物語は終章に移っていきます。
この作品は何を選択して進んでいくのか…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
オープニングテーマは、MAN WITH A MISSIONさんの「My Hero」
エンディングテーマは、クアイフさんの「愛を教えてくれた君へ」
しっとりとしながらもメロディアスだったエンディングが私の好みでした。
1クール全11話の作品でした。
第一印象は複雑でしたが、流石ノイタミナ枠の作品です。
感動と堪能の両方を一度に貰えた作品でした。