ogahiroaki さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
美しくて悲しい世界
1話から美しい世界に魅力されました。
単調で地味な色合いの中に映える砂色と緑、そして青色のコントラストが印象的です。砂漠の海からは死者が還り自分達と世界を断絶する憂いと儚さ、空からはいつかどこかにたどり着くという希望、島に育つ植物からは素朴ながら逞しく生きる島民の強い活力と生命力、そういった強さをシンプルな色遣いから伝わってきました。
しかし単調な色合いばかりでもありません。
表世界とは真逆に人間の感情を取り込んだ”ヌース”という存在はグロテスクで複雑なフォルムと豊かなな色彩で描かれており、喜怒哀楽全ての感情を吸収した複雑さがよく表れていました。
そういった色と絵の対比が人と世界に結びついて描かれていたと思います。
そしてよく見ると筆のタッチや生地までもが見えるキャンパス画調?の背景なのですが、それがなおさら絵本のファンタジー感を演出しています。ああいう背景にアニメキャラクターを立たせるのは難しいでしょうが、キャラの輪郭を細くあっさり気味に描くことで違和感を上手く消していました。
個人的に気に入ったのは戦闘と7話の舞踊シーンです。
戦闘シーンに迫力があるわけではありませんが、島民がいかに平和に暮らしていたのかが分かる珍しい戦闘です。防具もろくにせず無邪気に戦いに臨む描写から彼らが悪意と戦闘をまったく理解できていないことが伝わってきました。
そして7話の幼女が全身を動かし踊る姿を描いたアニメは珍しい(笑)しなやかな振り付けときめ細やかな手の動きは相当力が入っているはずです。死者へのたむけに送る悲しいレクイエムですが、色っぽさと美しさがあって歌声もめちゃくちゃ良いです。
そんな感じでファンタジー世界の表現は美しかったと思います。
「新世界より」と「凪のあすから」の世界観と通ずるところがあるので、2作が好きな方は気にいるかもしれません。