タケ坊 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
俺たちの旅はまだ始まったばかりだ! J.C.STAFFの本気
☆物語&感想☆
砂の海に覆われた世界で、
泥クジラと呼ばれる小島のような漂泊船に暮らす人々の運命と未来を、
「命」と「感情」をテーマに描いていく物語。
とにかく世界観の構築と設定が緻密に考えられており、
まさに本格ファンタジーと呼んで差し支えない作品。
物語が進むにつれて明かされていく泥クジラや帝国との関わり、
印と無印に纏わる運命や真実など、数々の設定が最初から決まってないと到底無理やな、
と思われる物語の展開...こりゃ原作者の創作能力がかなり高く無いと不可能でしょう。
物語の大雑把な流れとしては、リコスとの遭遇~スキロスとの戦い~アモンロギアへ
という感じで、起こった出来事だけを取ってみるとそこまで多くはないものの、
キャラの数や設定などの情報量はかなりのもので、そのどれもが無駄がなく、
充分にドラマも堪能できるもの。
惜しいと感じるのは、やはり当初のヒロインと見られたサミ...マジかと。。
他にもやはり泥クジラのキャラがあっさり姿を消すのは、
物語上必要な展開ではあれ、虚しさは感じましたね。
まぁこの虚しさと悲しさを乗り越えていく様、命と感情がテーマなのでここは受け入れないとダメなところでしょう。
また、圧倒的な世界観なので、最初の方は急展開じゃなく泥クジラの日常的なエピソードで引っ張って、
ある程度視聴者を良い気分にさせてからの鬱展開でも良かったかも知れませんね。
あれだけの素材があれば、展開が遅くても充分面白く出来たでしょうが。
多くの人が期待するファンタジーと言えば、所謂エンタメ性に富んだものや王道なのでしょうが、
本作の内容は心躍るような展開は少なく、
理不尽で心抉られるような悲しみや虚しさとそれを乗り越えていく連続。
レビュー読んでると、「期待した内容じゃなかった」と思ってる人が多いようですけど、
自分的にはシリアス万歳どんと来い!なので、内容には殆ど不満はありません。
タイトルに書いた通り、物語的にはまだまだこれからが本番ってところでしょうけど、
出来れば2クール観たかったな。点数に関しては暫定的です。
泥クジラの人々が罪人としての呪縛から真に解き放たれ、救われる日が来るんでしょうか。
☆声優☆
メインキャラ~端役までとにかくよく考えられた配役で演技も申し分ない。
チャクロやスオウのような気が優しくて悪く言えばヘタれな役柄には、
高い声質の声優を起用しておりイメージ的にもよく合う。
オウニのイケボには男でも惚れ惚れ、ええ声ですなぁ。
実力者揃いのなか、ヒロインのリコスに去年デビューの新人が抜擢されてましたが、
これがまた透明感のある澄んだ声で、演技にも全く拙さは無かったのは驚きでした。
☆キャラ☆
とにかくキャラ設定がよく考えられていると感じました。
主人公チャクロが俺TUEEE系最強主人公が好きな視聴者からは魅力的じゃないと思われるところでしょうが、
記録者としての立場的に全く問題無いと思いますね。
むしろ自分は弱い主人公の方がドラマ性を求める物語では、よりリアルで人間味があって好み。
こういう主人公がここぞという場面で見せる迫真の演技に心奪われるんですよね。
長老会の人々の決断に抗うチャクロの叫び、これは本当に上手かった。
チャクロ以外のリコス、オウニ、スオウなどのメインキャラも、
観方を変えれば主人公といえるほど丁寧な描写がされていると思います。
呪いを背負った団長も、秘めてるものがありそうで今後気になるキャラですね。
印の背負った理不尽な運命、それを知りながら隠し続けてきた無印の長老たち、
何も知らされ無かった人々、それぞれのやりきれない気持ち全てに共感と同情せざるを得ない、
とても巧い描かれ方だと思います。
オルカやリョダリといった帝国側に関しては、まだ今の段階では評価は出来ないかな。
☆作画☆
J.C.STAFFの本気を感じましたね。
本格ファンタジーの世界観を陳腐なものにしない素晴らしい背景は、
デジタルが当たり前になった昨今では、手描きの質感や温かみを存分に感じるもの。
これはTVアニメとしてはかなりのものでしょう。
キャラの描き方も昨今では珍しくなくなりましたが、
セル画調の輪郭を掠れさせた線の描き方などがとても良い味を出していました。
スキロス内のヌースの間での戦闘シーンは少々動きが少ない、というか飛んでる感じはしましたが、
他のシーンも見る限り、恐らく原作も戦闘シーンに関してはそこまで細かくは描いてないんでしょうね。
☆音楽☆
OP,ED共にデビュー作なのは驚きました。
OPは泥クジラの人々そのものを歌ったもので、曲調をメジャーキーにすることで、
未来に希望が持てるような明るい印象を与えているのが、OPとしてよく出来てますね。
EDはチャクロの語りから入るイントロが印象的。
荒涼とした砂の海のアニメーションをバックに透き通った声で歌う内容は、
リコスの心境を表していますね。
OP同様未来に希望を感じさせつつ、それが容易なものではない事がよく伝わってくる見事なED。
作中BGMもファンタジーの世界観に合うオーケストレーション主体のものでとても質が高い。
安っぽさを感じさせない所は生音に拘った作りであることは明らか。
個人的にはもう少し音量がデカくても良いと思える場面はあったが、ほぼ満足な出来。
加隈亜衣さんの歌う作中曲も良かった。
J.C.STAFFが原作に惚れ込んで本気の製作陣で臨んだ作品だというのは容易に判るものの、
いまいちウケは良くない模様。まぁ今のアニメ視聴者の多くが求めてる作風じゃないのかも知れませんね。
最近は世界同時配信も増えてきた事もあり、恐らく日本よりも海外の方が評価は高くなると予想しますが、
こちらの反響がどこまであるか...続編制作が決まれば良いんですが。